低キャンセル率を支える仕組みづくり。デジタルが生む“余白”を患者に還元する「melmo」の運用術

低キャンセル率を支える仕組みづくり。デジタルが生む“余白”を患者に還元する「melmo」の運用術

2025年12月11日

地域に根差し、口腔外科を専門領域としながら幅広い年代の患者に対応する「医療法人秀友会 山本歯科医院」。同院は、デジタル化を推進しながらも「人は不要にならない」という信念を持ち、テクノロジーによって生まれた時間を患者との対話に充てることを重視している。

院長を務める山本哲嗣先生は、日々の診療の傍ら、医院運営の改善にも尽力。特に課題となっていた予約管理とキャンセル対策に対し、患者向けアプリ「melmo(メルモ)」を導入した。

同院は過去2年にわたり、当日キャンセル率は平均7%弱、無断キャンセル率は2%台と、低い水準を安定して維持している。驚くべきは、一般的なキャンセル対策として広く使われているSMSリマインドやハガキなどは一切行っていない点だ。

高い実績を誇る同院が、なぜ今「melmo」を導入したのか。また、LINEなどの他ツールではなく、なぜ「専用アプリ」を選んだのか。導入のきっかけと効果、そして登録率を高めるための緻密なチームプレーとは。院長先生とスタッフの髙橋様にお話を伺った。


なぜLINEではなく「アプリ」なのか? コストと“医療機関としての信頼感”

まず、melmoの導入を検討されたきっかけや、導入前の課題について教えてください。

導入の最大のきっかけは、「スタッフの負担軽減」と「ヒューマンエラーの解消」です。当院の直近2年間のキャンセル率は7%前後で推移しており、数字そのものは悪いわけではありません。しかし、その裏側にある予約管理業務にはいくつかの課題がありました。

これまで当院では、次回予約の日時を紙に手書きして患者様へお渡しする方式を長年採用してきました。しかし、患者様の入れ替わりが激しい忙しい時間帯に、スタッフが手書きで書き写す作業は大きな負担となっていました。また、忙しさのあまり予約時間を誤記してしまうヒューマンエラーも発生しており、それが当日の混乱やトラブルにつながることも度々あったのです。

予約情報が「DENTIS(デンティス)」と自動連携し、患者様がアプリで即座に正確な情報を確認できるmelmoは、こうしたスタッフの労力削減とヒューマンエラー対策として最適だと判断しました。

もう一つの課題は、無断キャンセル対策です。当院は口腔外科治療も行っているため、毎日4〜5人は予約外の急患がいらっしゃいます。そのため、多少のキャンセルが出ても業務上の大きな問題にはなりませんが、無断でキャンセルされるのではなく事前にご連絡いただければ予約管理が非常にスムーズになります。

これまでSMSやハガキは一切行わず、予約忘れの多い方や過去に無断キャンセルがあった方をピックアップして前日に電話確認を行っていましたが、アプリの自動リマインド機能を使えば、この確認作業の労力を減らしつつ、事前連絡の増加につながるのではと考えました。

キャンセル対策やリマインド機能を持つツールとして、LINEなどは検討されなかったのでしょうか?

はい、LINEの導入も検討しました。しかし、結果としてmelmoを選んだのには明確な理由があります。まず、LINEは配信数に応じたコストがかかる点や、ブロックされるリスク、他の企業アカウントの通知に埋もれてしまう懸念がありました。その点、melmoは「診察券」としての機能に特化しているため、患者様にとっても「医療機関の大切な情報」として認識されやすく、通知を見逃されることが少ないと感じています。運用コストがかからず、かつ医院公式のデジタルツールとして信頼感を醸成できる点は、専用アプリならではの強みですね。

スタッフ自身が「患者体験」を。スムーズな導入を生んだ現場の“自分ごと化”

導入にあたり、スタッフの皆さんにはどのように周知し、協力を得ていったのでしょうか?

まずミーティングで、導入の目的は「みんなの労力削減のためである」と明確に伝えました。新しいことを始める際、スタッフの年代を問わず少なからず不安が先行するものです。そのため、いきなり全てを変えるのではなく、機能を絞って導入を進めていきました。

特に効果的だったのは、スタッフ全員に自分のスマートフォンへmelmoを入れてもらい、実際に患者様として予約の流れや表示を体験してもらったことです。

これにより、スタッフ自身が「直前のキャンセル対策になる」「紙の予約票をなくした患者様からの問い合わせ電話が減る」といったメリットを肌で感じることができました。試用後に「これは楽だね」という声が上がり、非常に肯定的に受け入れてもらえました。

スタッフの皆さんの積極的な取り組みを促すために、何か特別な工夫はされましたか?

特別な報酬制度などは設けていません。ただ、導入当初に積極的に案内してくれたスタッフを褒めることは意識しました。

また、「自分自身が使えていないと患者様には説明できないよ」と試用を促したのが良かったと思います。実際に使ってみることでアプリの機能を理解し、患者様にとって本当に便利なツールであり、「紙の手書きが不要になる」という実利もあると実感できます。「いいものだから自信を持ってお勧めできる」、この心理的要素が現場での普及に効果的に働いたと考えています。

登録のカギは「チーム連携」。インカムと予約メモで取りこぼしを防ぐ

実際の患者様には、どのような流れでアプリの案内をしているのでしょうか?

最も効果的なのは、歯科衛生士による処置後のタイミングです。施術が終わり、私が最終チェックを行うまでのわずかな待ち時間に、「次回からスマホで予約確認ができるようになりますよ」とご案内すると、その場ですぐにダウンロードしてくださる方が非常に多いです。

その場で登録が完了しなかった場合のフォローはどうされていますか?

ここが当院の登録率を伸ばすポイントなのですが、「インカム」と「予約メモ」を使った徹底的な連携を行っています。

もし診療台で登録まで至らなかった場合、スタッフはインカムで受付にその旨を伝えます。そして会計時に、受付スタッフが「先ほどご案内があったかと思いますが、よろしければ今お手伝いしますね」と再度お声がけし、二次元コードの読み取りをサポートします。

それでもお急ぎで「次回にする」という患者様に対しては、DENTISの予約メモ欄に「次回受診時紐付け」と記録を残します。こうすることで、次回来院した際にどのスタッフが対応しても、「今日はアプリの登録をしましょう」と自然に案内ができるのです。この「一回で諦めない、情報のバトンパス」が、着実な利用増につながっています。

「失くさない安心感」が患者様の評価を変えた。業務効率化のその先へ

導入後、患者様からはどのような反応がありましたか?

非常にポジティブな反応をいただいています。「紙をなくす心配がなくなった」「財布がスッキリして嬉しい」といった新しい体験を楽しんでいただいている印象です。

特に複数回先の予約まで取られる患者様にとっては、紙の診察券では管理しきれなかった情報がアプリ一つにまとまるため、「当院に通うのが楽になった」と、医院へのロイヤリティ向上にもつながっていると感じます。

業務効率の面ではどのような変化がありましたか?

まず、紙の予約票への記入作業がなくなり、ヒューマンエラーによる「予約日時の書き間違い」が体感として限りなくゼロに近づきました。

また、以前は毎日行っていた予約確認の電話も、アプリのリマインド通知のおかげで半数程度にまで減少しています。キャンセル率を維持・改善しつつ、その裏にあった「スタッフの苦労」を劇的に減らすことができました。

脱アナログの最適解。LINEにはない「医療機関としてのインフラ性」

これから導入を検討している医院へ、melmoを推奨するとしたらどのような点がポイントになりますか?

二つの大きなポイントがあります。一つ目は、これまで紙の予約票やハガキでリマインドをしていたような、アナログな運用をしている医院ほど導入効果が高いという点です。手書きや郵送といった「作業」そのものがなくなる解放感は計り知れません。

二つ目は、やはり「LINEとの違い」です。LINEは広く普及しており便利ですが、どうしても通知が過剰になったり、広告と混同されて敬遠されたりすることがあります。その点、melmoは余計なコストがかからず、通知も予約や医療に関するものに限定されるため、患者様に長く使っていただける「医院のベースツール(インフラ)」として非常に優れています。

一定数、特別な対応が必要なケースにはLINEやSMS、電話などが有効ですが、全員に対するベースのリマインドツールとしては、専用アプリであるmelmoに分があると感じます。「流行りだから」ではなく、医院の基盤を整えるツールとして導入するには、汎用性の高いmelmoが最適解だと思います。

そもそも、キャンセル率の改善に最も効果があるのは、患者様の通院への価値認識を高めることと、信頼構築です。リマインダーやキャンセル規定はその補助要素であって、信頼構築が成立していない状況での過剰なリマインドは効果が限定されることもあります。その点で、診察券アプリは押し付け感がなく、適度なリマインド効果を有しており、自然に受け入れられやすいと感じます。

「人が不要」ではなく「労力を下げる」。デジタル化で目指す未来

今後の機能に関するご要望や、医院としての展望についてお聞かせください。

機能面では、リマインド通知に「次回はマウスピースを持ってきてください」などといった簡単なメモを添えられる機能があると嬉しいですね。

当院の方針として、ペーパーレスやデジタル化は進めますが、それは「人が不要になる」という意味ではありません。コミュニケーションが発生する煩わしさの中にこそ、医療を行う上で重要な信頼関係の構築のヒントがあります。

あくまでも「労力を下げる」ためのツールとしてmelmoを活用し、それによって生まれた余裕を、患者様との温かいコミュニケーションに充てていきたいと考えています。医療体験をなめらかにし、人と人との関わりをより豊かにすることこそが、私たちが目指すデジタル活用の形です。

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