オンライン診療導入で「全国の患者が使える歯医者」に。舌痛症に注力する医師が「歯医者はリモートで事前面談をすべき」と語る理由

オンライン診療導入で「全国の患者が使える歯医者」に。舌痛症に注力する医師が「歯医者はリモートで事前面談をすべき」と語る理由

2022年10月07日

福岡市博多区の「つのだデンタルケアクリニック」は、国内の歯科でも珍しく、舌痛症の治療に力を入れている歯科医院です。2020年ごろにクラウド診療支援システム・CLINICSを導入し、現在は歯科専用システムのDentisに移行。引き続き、オンライン診療を使い続けていただいています。

今回はオンライン診療を導入した背景、導入してよかったことについて、院長の角田 智之先生にインタビュー。「歯科は施術前に15分でもいいから患者さんと面談すべきだ」とおっしゃる背景について伺いました。

課題
  • ニッチな領域である舌痛症に悩まされる患者が全国にいる中で、地元エリアの患者しか診療することができなかった
  • 手軽に患者が相談できて、使いやすさを体感してくれる状況を作り出したかった
解決策
  • オンライン診療を取り入れて、診療場所の縛りをなくした
  • 「1回目は対面、2回目以降はオンライン」という手段を患者に提示できる環境を整えた
効果
  • 福岡県外から利用してくれる患者が大幅に増えた
  • 離島に住んでいる方でも利用してくれるようになった
  • オンライン診療によって、導入前と比べて1日2~3名の患者を多く診られるようになった

カウンセリングのみでの舌痛症治療に注力する歯科



──角田先生は日本でも珍しく舌痛症に力を入れていらっしゃいます。どういったきっかけで治療を始められたのでしょうか。

舌痛症の存在を知ったのは、大学病院の口腔外科に在籍していたころでした。舌痛症という疾患は、全国的に悩んでいる患者さんが多いと感じたんですね。というのも、はっきりした原因はわかっていないのですが、ストレスによって引き起こされることが多い。つまり口腔内にトラブルを抱えているのではなく、メンタルの部分に根本的な原因があるからです。

しかし患者さんは「口腔内に問題がある」と思いますから、耳鼻科や歯科に行きますよね。ただ舌そのものにトラブルがないので「ストレスでしょう」と片付けられてしまい、心療内科などの紹介状を渡されます。それで心療内科に行くと、抗うつ薬・抗不安薬を処方されるのですが「舌が痛いのになんで抗うつ薬を?」と思い服用を躊躇される方が多いようです。

また抗うつ薬は根本的な解決ではなく、あくまで一時的にストレスに対処する方法に過ぎません。すると解決に至る前に、舌痛症を放置してしまうんです。こうした流れで、患者さんが難民化してしまい、症状が長期化していることを知ったのが治療を始めたきっかけです。

──いつごろから力を入れ始めたのでしょうか。

本格的に注力し始めたのは、2020年ごろです。精神科医のウイリアム・グラッサーが開発した「リアリティセラピー」という手法を使って、カウンセリングだけで治療するようになりました。お薬を処方するのではなく、患者さんとお話をしてストレスを抱えている根本的な要因を探っていく方法です。

すると、効果があったんですね。本人のストレスが解消すると、舌のしびれなどがなくなるので「カウンセリングを始めた当初は痛かったのに、1時間後の終了時にはもう痛みを感じない」という方もいらっしゃいました。歯科医として、カウンセリングのみで効果を出したのは私が最初かもしれません。

舌痛症の治療とオンライン診療の相性の良さを感じて導入


──オンライン診療を導入したきっかけを教えてください。

もともとオンライン診療と舌痛症の治療は相性がいいと思っていました。舌痛症の治療内容としては、患者さんの舌の様子を診て会話をするだけで、歯の施術をする必要がありません。そのため導入のハードルが低かったんですよね。患者さんもオンラインで診察を受けられるのは嬉しいだろうな、という考えもありました。

また舌痛症は歯科ではニッチな分野ですので、どうしても地元の福岡県の患者さんだけだと母数が限られてしまいます。しかし全国的に患者さんがいることは知っていたので「より多くの方の力になりたい」という考えもありましたね。

そんなときにコロナ禍に突入して、より患者さんが来にくくなってしまった。そこでオンライン診療の導入を決断したんです。「患者さんが受診しやすい環境を作りたい」「県外からの患者さんも受け入れたい」という2つの課題を、同時に解決してくれるツールだと感じましたね。

──実際に使ってみていかがでしたか?

最初からほとんど問題なく使えました。特にオンライン診療を導入してから、福岡県外の患者さんが増えたのは目に見えて感じています。ホームページにオンライン診療のリンクを貼っているので、そこから予約してくれる方が増えました。特に「便利さ」を感じたのは「離島にお住まいの患者さん」をオンラインで診療したときですね。

対面ではこれだけ幅広いエリアの患者さんを診療できなかったので、私としても嬉しいですし、患者さんも「自分に合った医者を選べる」という部分で選択肢が広がると思います。

──そのほか、オンライン診療を導入して感じたメリットはありますか?

1日で診られる患者さんの数が増えました。これはあくまで私の使い方ですが、診療時間外にもオンライン診療で患者さんを診ているんですよ。休診時間のお昼休みや、診療後の時間を使っています。

これはオンライン診療だからできることだと思います。対面だと受け付け・診察室の対応のためにスタッフにも負担をかけてしまうので、診療時間外に診ることはできません。オンライン診療だと、私一人で対応できますし、終わった後に片付けをする必要もない。単純に1日あたりで診られる患者さんの数が増えたのは大きなメリットですね。

すべての歯科が「オンライン診療での事前面談」をすべき理由



──オンライン診療に関しての患者さんの反応はいかがですか?

診察前に電話でスタッフに「どうやってつなぐの?」と質問される方はいらっしゃいますが、ほとんどトラブルなく診療できています。患者さんの多くがスマホの扱いになれていますので、そこにハードルはないようです。

面白いのは、隣県からお越しの方は「最初だけ対面でお話をして、2回目からオンライン診療に切り替えたい」とお考えになるケースが多いんですよ。

──そうなんですね。どうしてでしょう。

やっぱり「初めてかかる歯医者」って怖いんだと思いますよ。これは舌痛症に限らず、虫歯の治療でも、ホワイトニングでも、矯正治療でもそうだと思います。だから患者さんは初診で「自分に合っている歯医者かどうか」を見極めたいのでしょう。

それで初診だけ対面を選択される方が多いんですが、私としては「だからこそ逆に初診はオンライン診療のほうがいいんじゃないか」と思いますね。多くの場合、歯科医は初診で歯の様子を診て、その日のうちに診療が始まってしまうと思います。

しかし、そこで患者側としては「思っていた対応ではなかった」や「この歯医者さんで大丈夫かな」と不安を感じることもあると思うんですよ。それでも治療が始まっているので、医院の変更はしにくい。もやもやしてしまうこともあるのかな、と思います。こうした感情から無断キャンセルにつながることもあるんじゃないかな、と。

だからこそ、初診の際に15分でもいいから面談をすべきだと思います。患者さん側から、医師に質問したいこともありますよね。例えば「料金は総額でいくらくらいかかるんですか?」とか「担当の医師は途中で変わることはありますか?」など、不安を解消したいはずなんですよ。

ただ、面談だけであれば歯科医院を訪問するのは患者さんにとって手間ですよね。だからこそ初回面談でオンライン診療を使うべきだと思っています。

──角田先生も面談をされているのでしょうか。

はい。はじめに必ず15分程度面談をします。その際に画面を通じて資料を共有しながら、舌痛症のメカニズムを説明します。また患者さんから「本当にカウンセリングだけで治るの?」などの質問をいただくこともあります。その際には、過去の事例などを共有しながら、丁寧にご説明しています。すると患者さんは納得して、次回の治療に気持ちよく進めるんです。

この「治療に臨む前に、医師と患者が安心できる状況にすること」が重要です。だからこそ、患者さんは「この歯医者さんをかかりつけにしよう」と思えます。そういった意味でオンライン診療は、舌痛症だけでなく、歯科医院全体に広がるべきツールだと思っています。

またオンライン診療は、患者がセカンドオピニオンを求める際にも役立つと思っています。「A歯科で〇〇の処置をしてもらったんだけど、痛みが引かない。この治療法は正しいの?」という際に、気軽に他の歯科医師に相談できるツールですよね。

──今後、オンライン診療を使って、取り組みたいことはありますか?

小児予防歯科で使いたいと思っています。子どものブラッシング指導はオンラインのほうがいいと感じていますね。ご家族にわざわざ歯科医院に来ていただく手間を省くことにもなります。また子どもはスマホを通して、先生と話すだけでも楽しいと思うんですよ。


──以前、お話を伺った歯科医院さんでもオンラインで画面越しにブラッシング指導をしているそうですが、子どもからすると歯医者さんがまるでYouTuberのように思えるんだそうです(笑)。

やっぱりそうなんですね。実際、いざ対面する際にも「怖い」より「先生に会えて嬉しい」という気持ちのほうが強くなりそうですよね。また、それがモチベーションで歯を磨くのが楽しくなることもあるのかな、と思います。

舌痛症だけでなく、もっと幅広い歯科領域に生かせるツールだと思いますので、今後はより活用していきたいですね。