訪問歯科における診療の流れは6ステップ|概要や対象者、手続きについても徹底解説!

訪問歯科における診療の流れは6ステップ|概要や対象者、手続きについても徹底解説!

2023年08月23日

「訪問歯科について詳しく知りたいけど、どうやって始めるのか、どんな流れで進むのかがわからない…」このような悩みを持つ院長も多いでしょう。

そこで本記事では、訪問歯科診療の始め方や流れを6つのステップで解説します。また、訪問歯科が対象とする患者の条件、必要な手続きなどについても詳しく説明します。

訪問歯科とは?

訪問歯科とは、歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設に往訪し、歯の治療や口腔ケアをすることです。歯科医院に行きたくても行けない人のためのサービスになります。訪問歯科の費用は医療保険のほかに介護保険も適用可能です。

訪問歯科の対象者

訪問歯科を利用できる人は、1人で歯科医院に行くのが難しい人です。例えば、以下のような特徴が挙げられます。

  • 高齢で体が不自由な人
  • 病気や障害のために動くのが困難な人
  • 寝たきり状態で外出できない人

訪問歯科の利用資格は年齢や介護の認定には関係ありません。このサービスは、一人では通院が困難な方々を支援することを目的としています。ただし、自分の都合で歯科医院に行かないだけの人は、訪問歯科を利用できません。

訪問歯科で診療できる内容

【虫歯や歯周病の治療】

訪問歯科医師は、虫歯や歯茎の炎症など口腔内の病状を診断し、必要な治療をします。詰め物の修理や歯石除去、歯周ポケットの清掃など、一般的な歯科治療が訪問診療の対象となります。

【入れ歯の作り直しや修理】

入れ歯が合わない場合や壊れた場合には、訪問歯科医師が訪問し、必要な調整や修理をします。

【口腔ケアと食事のサポート】

口腔内の清掃方法や歯磨きの指導、フロスやうがいの効果的な使い方など、口腔ケアに関するアドバイスを行います。また、利用者の自宅や施設での食事を観察し、食べることに関するサポートやアドバイスをします。

訪問歯科は、利用者の自宅や施設での生活環境に合わせた口腔ケアや歯科治療を提供することで、口腔健康の維持や生活の質の向上を支援します。利用者の個別のニーズに合わせた診療内容が提供され、快適で健康的な口腔状態を実現することが目指されています。

訪問歯科を始めるための手続き

訪問歯科を始めるには、以下の手続きが必要です。

1. 開業届の提出

訪問歯科を担当する医師は、開業届に「訪問診療」の欄に〇印をつけて、管轄の保健所に提出する必要があります。開業届は、医療法で開設後10日以内に届け出るように定められています。

2. 在宅医療総合管理料の届出

問診療する医師は、在宅医療総合管理料(在医総管)の加算を受けるために、都道府県知事に届出する必要があります。届出は、訪問歯科を開始する前月末までに行う必要があります。

訪問歯科における診療の流れは6ステップ

【ステップ1】患者からの問合せ・相談を受ける

訪問歯科の初めのステップは、患者やその家族、介護者からの問い合わせや相談から始まります。この段階で、患者の具体的な問題や現在の生活状況、住居環境、そして健康状態などについて理解することが重要です。

これらの情報は、歯科医療をどのように提供するかを決定し、適切な診療計画を作成するための基礎となります。目標は患者に対して最善のケアを提供することであり、それを実現するために個々の状況を理解することから始める必要があります。

【ステップ2】訪問日を提案・決定する

次のステップは、診療日の提案と決定です。これは、患者から得られた情報を元に、診療する最適な日時を決める過程です。

この際、患者の日常スケジュールや都合、症状の緊急度、患者が医院に通うための移動手段やそれにかかる時間などを考慮する必要があります。

ここで大切なのは、患者が診療のために必要な時間を確保できるよう配慮することです。そのため、日時の提案は患者中心に行うべきであり、なるべく患者のライフスタイルに配慮したものでなければなりません。

患者の全体的な健康状態を把握するために、訪問歯科医師と患者の主治医や他の医療専門家との連携も重要です。全ての情報が集まった時点で、適切な診療日を提案し、患者と調整します。

なお、クラウド歯科業務支援システムDentisは、訪問予定の作成や管理などの機能も提供しており、訪問先からでもカルテを閲覧・記録することが可能でポータビリティに優れたシステムです。

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【ステップ3】訪問先へ伺う

この日、医療スタッフは患者が待つ場所、例えば自宅や介護施設、特別養護老人ホームなどへ向かいます。移動には専用の車両を使用します。

また、適切な治療を提供するために、必要な医療器材も忘れないように持っていきます。訪問診療を行う場合の機材や道具の例は、カルテや処方箋、ライトや口腔内清掃用具、診査器具や治療用器材などです。最初から器材すべてを用意するのではなく、できるものは代用品や訪問先で用意してもらう場合もあります。

さらに、訪問する医療スタッフは、患者の居室や使用スペースを考慮して、プライバシーに配慮しながら治療するよう努めます。患者の体調に注意して、無理のない範囲で治療を進めることが重要です。治療の進め方は患者中心であるべきで、快適さと安全性を優先します。

【ステップ4】治療計画を立案・提出する

訪問歯科診療では、患者の口腔状態や全身の健康状態、生活環境などを把握した上で、治療計画を立案します。

【治療内容】

虫歯や歯周病の治療、入れ歯の作製や修理・調整、口腔ケア、食べることのサポートなど、訪問歯科診療で行える診療内容を具体的に決めます。

【治療の目標】

口腔機能の回復や維持、食事や話すことなどの日常生活の快適さ、誤嚥性肺炎の予防など、治療をすることで期待できる効果を明確にします。

【治療にかかる期間】

治療が完了するまでに必要な時間を見積もります。治療期間は患者の口腔状態や治療内容によって異なりますが、一般的には数ヶ月から半年程度となります。

【治療の頻度】

訪問歯科診療は通常1週間に1回程度行われますが、治療内容や患者の希望に応じて頻度を調整します。治療中は定期的に口腔内のチェックや評価をします。

【治療費用】

訪問歯科診療は医療保険や介護保険が適用されるため、患者の負担は通常の保険の負担割合と同じ「1割~3割」となります。ただし、交通費を請求する場合は、その分も考慮してお知らせします。

この治療計画は患者や家族に詳しく説明し、同意を得た後に提出します。治療計画は固定されたものではなく、患者の健康状態や生活環境の変化に応じて、柔軟に修正される可能性があります。その場合は再度説明し、同意を得ることが大切です。

【ステップ5】訪問診療を継続する

治療計画が確定し、患者やその家族から同意を得られたら、訪問診療は継続します。治療は患者の具体的な症状、体調、生活環境等に応じて、予定された日時に行います。

また、患者の健康状態には注意が必要です。訪問診療の間隔や頻度は、患者の状態や治療の進行度により変化します。重篤な症状が見られる場合や新たな医療的な問題が発生した場合、訪問歯科医師は他の医療専門家と協力して対応します。

さらに、訪問診療では患者やその家族との定期的なコミュニケーションが不可欠です。治療の進行状況を報告し、変化があれば速やかに対応します。それが患者の口腔健康を維持し、生活の質を向上させることになります。

【ステップ6】定期的な検診・専門的ケアに移行する

治療の完了後、定期的な検診と専門的なケアに移行する段階です。このステップでは患者の口腔健康の維持と、問題の早期発見を目指します。

治療が一段落ついた後も、口腔の健康状態は日々変わります。そのため、定期的な検診やケアは非常に重要です。新たな歯科疾患の早期発見や、すでに治療された部位の再発防止が目的です。

定期検診の頻度やケアの内容は、患者の年齢、一般的な健康状態、口腔状態など、個々の状況によって決定されます。訪問歯科医師は、これらの要素を考慮に入れて最適なプランを作成し、それを患者やその家族と共有します。

訪問歯科の流れでよくある5つの質問

訪問歯科診療に関するよくある質問をまとめました。訪問歯科の健康保険適用条件や自費治療の可否、交通費請求などについての疑問を解消します。

【質問1】訪問歯科で健康保険の適用外となるケースとは?

訪問歯科で健康保険が適用されるには、以下の条件が必要です。

  • 歯医者さんへの通院が難しい正当な理由があること
  • 訪問する歯科医院から半径16km以内に自宅や施設があること

これらの条件を満たさない場合は、保険適用外となります。例えば、通うのが面倒や時間がないという理由で訪問歯科を依頼した場合や、16kmを超えた場所で訪問歯科を受けた場合は絶対的な理由がない限り認められません。

【質問2】訪問歯科は自費診療も可能?

訪問歯科は基本的に保険診療ですが、希望すれば自費診療も可能です。自費診療のメリットは、保険では対応できない高度な技術や材料を利用できることや治療期間や回数を短くできることなどがあります。

ただし、自費診療は高額になる可能性があるので、事前に費用や内容について十分な説明が必要です。また、自費診療を希望する場合は、同意書の署名が必要になります。同意書には、自費診療の内容や目的、費用などを明記します。

【質問3】訪問歯科の利用者に対して交通費や出張費を実費請求することは可能?

訪問歯科では、歯科医師や歯科衛生士が患者の自宅や施設に出向いて、歯科診療を提供します。このサービスは保険診療で行われるため、基本的な診療費は保険適用となります。

しかし、訪問する際にかかる交通費や出張費は保険外となるため、患者から別途請求ができます。交通費や出張費は、実際にかかった金額を領収書などで証明して、患者に領収書を渡すことが可能です。

また、交通費や出張費の請求は医院によって異なります。一部の医院では、地域貢献やサービス向上のために無料で訪問する場合もあります。その場合は、患者に無料であることを明示しておく必要があります。

【質問4】歯科衛生士がいない医院でも訪問診療はできる?

歯科衛生士がいない医院でも訪問診療はできます。ただし、在宅療養支援歯科診療所という制度には登録できません。

在宅療養支援歯科診療所とは、訪問歯科診療するために一定の基準を満たした歯科医院のことです。登録すると訪問歯科診療に関する情報提供や相談、連携などの支援を受けられます。

登録するための基準のひとつに、歯科衛生士の配置があります。歯科衛生士がいない医院でも訪問診療はできますが、在宅療養支援歯科診療所としての支援はできません。

【質問5】訪問歯科を始める際にまずやるべきことは?

訪問歯科を始める際にまずやるべきことは、訪問歯科の需要がある地域や施設を調査することです。訪問歯科はまだ普及していないため、需要があっても対応できる医院が少ない場合があります。

訪問先と介護保険の有無によって、保険請求の方法が変わることや、訪問診療を算定できる範囲は半径16km以内であることなど、注意点があります自宅に訪問する場合は、ケアマネージャーや地域包括支援センターなどと連携をとって、利用者のニーズや口腔状態を把握することが重要です。

施設に訪問する場合は、施設の方と事前に打ち合わせをして、利用者の数や症状、訪問頻度や時間帯などを確認することが必要です。訪問歯科医院として登録するためには、一定の基準を満たす必要があります。歯科衛生士の配置や訪問歯科診療の実績要件などを確認してください。

まとめ

訪問歯科診療は、通院が困難な患者のための重要なサービスですが、その適用や自費治療、交通費請求などの要件については理解が必要です。また、歯科衛生士の配置や地域のニーズ、訪問診療を算定できる範囲など、訪問歯科診療を始める際には様々な視点からの調査や準備が必要となります。

以上のような情報を踏まえ、訪問歯科診療の実施や、そのIT支援について適切な選択と活用を行うことは、患者へのより良いサービス提供につながり、また歯科医院の経営安定化にも貢献します。

なお、クラウド歯科業務支援システムDentisは、訪問予定の作成や管理などの業務を効率化し、訪問先からでもカルテを閲覧・記録することができます。

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