【医院向け】歯科医師国保とは?健康保険との違いや加入するメリット・デメリットを徹底解説!

【医院向け】歯科医師国保とは?健康保険との違いや加入するメリット・デメリットを徹底解説!

2023年11月27日

歯科医師国保への加入によって、歯科医院の院長には、福利厚生制度の向上や保険料の負担をおさえるなどのメリットがあります。

本記事では、歯科医師国保の概要や健康保険との違いについて解説しています。また、歯科医師国保への加入による歯科医院の院長にとってのメリット、デメリットについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

歯科医師国保とは?

歯科医師国保とは、歯科医院で働く方を対象にした医療保険制度です。本制度は、歯科医師だけでなく、歯科衛生士、歯科技工士、歯科助手、受付スタッフなど、歯科医院に従事するすべての方と家族が加入の対象です。

歯科医師国保には、地域ごとに複数の組合が存在し、名称も地域によって異なります。複数ある組合のなかでも、最も大きな組合が「全国歯科医師国民健康保険組合」で、20府県の支部で構成されています。

また、公式データによると被保険者は63,000人以上、予算規模は230億円を超えている国保組合です。歯科医師国保の詳しい内容やどの組合に加入すべきかは、各地域の情報や公式ホームページを参考にしてください。

参考:全国歯科医師国民健康保険組合

歯科医師国保の保障内容

ここでは、全国歯科医師国民健康保険を例にとり、医療費負担を除いた保障を紹介します。

  • 節目検診事業の実施:被保険者やその配偶者などの該当者に30,000円の費用補助
  • インフルエンザ予防助成金:被保険者に対して、3,000円を上限とした補助
  • 高額療養費資金貸付制度:高額療養費の支給を受ける見込みの組合員への一時的な貸付
  • 出産費資金貸付制度:出産育児一時金の支給を受ける見込みの組合員への一時的な貸付
  • 後期高齢者組合保健事業:後期高齢者組合員の入院時に疾病見舞金を支給、また、組合員が死亡した際に遺族へ死亡見舞金を支給
  • 海外療養費
  • 移送費
  • 傷病手当金

参考:全国歯科医師国民健康保険組合|保険給付

歯科医師国保への加入条件

歯科医師国保への加入条件について紹介します。なお、歯科医師国保へ加入は、以下の条件を満たす者のみが対象となります。

  • 1種組合員:支部所在地の歯科医師会会員である歯科医師で規約第4条の地区内に住所を有するもの
  • 2種組合員:1種組合員である歯科医師が開設または管理する診療所に雇用される歯科医師で規約第4条の地区内に住所を有するもの
  • 3種組合員:1種組合員である歯科医師が開設または管理する診療所に雇用される者(技工士、衛生士、歯科助手、事務員等)で、規約第4条の地区内に住所を有するもの
  • 家族:1種、2種、3種組合員の同一世帯に属しているもの

歯科医師会の会員であるか、そのもとで働く者およびその家族が対象となります。なお、所属の歯科医院が各都道府県の歯科医師会に参加していることが必須となります。歯科医師会に所属していない場合は、追加できないケースもあることに注意が必要です。

参考:全国歯科医師国民健康保険組合|被保険者と組合員

歯科医師国保と健康保険の違いは3つ

歯科医師国保の保障内容や加入条件について理解できたところで、次は健康保険との違いについて紹介します。主な違いは次の3つです。

  • 収入により保険料が変化しない
  • 扶養の概念がない
  • 厚生年金への加入が義務ではない

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.収入により保険料が変化しない

歯科医師国保の一つの大きな特徴として、保険料が一律である点が挙げられます。健康保険では収入によって保険料が変化しますが、歯科医師国保の場合、収入に関係なく保険料は一律です。(一部被保険者を除く)

そのため、収入の金額によっては、社会保険や国民健康保険に比べて保険料が安くなる可能性があります。また、保険料は各組合によって金額が異なるため、加入している組合に保険料を確認する必要があります。

2.扶養の概念がない

扶養の考え方について、健康保険と歯科医師国保との間には明確な違いがあります。健康保険では、家族が一定の条件を満たせば扶養家族として認められ、世帯人数による保険料の増減はありません。

これに対し、歯科医師国保には「扶養」という概念がありません。家族も被保険者として、人数分の保険料を支払う義務が課せられます。結果として、家族が多い歯科医師がこの歯科医師国保に加入する場合、高額な保険料が発生する可能性があります。

この点から、世帯人数の多い歯科医師は、歯科医師国保の特性をよく理解しておく必要があります。

3.厚生年金への加入が義務ではない

健康保険に加入している多くのサラリーマンや企業の従業員は、厚生年金への加入が義務付けられています。しかし、歯科医師国保にはこのような厚生年金への加入の義務はありません。

そのため、歯科医師国保に加入している歯科医師や関連スタッフは、厚生年金への加入を検討する際に、事業所ごとに加入する必要があります。これらの点をよく理解し、歯科医院の院長は新しいスタッフへ歯科医師国保と社会保険の違いについて説明する必要があります。

院長にとって歯科医師国保に加入するメリットは3つ

歯科医師国保に加入する院長にとってのメリットを3つ紹介します。

  1. 福利厚生の充実を図れる
  2. 保険料の負担を抑えられる
  3. 任意給付を用意できる

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.福利厚生の充実を図れる

歯科医師国保では、組合ごとに「保険事業」と呼ばれる福利厚生が用意されています。たとえば、健康診断や予防接種、人間ドックなどです。

また、歯科医師国保では、医療費の一部負担や各種健診があるほか、高額療養費の一部払い戻しや出産一時金の支給などの保障内容が充実しています。

これらの福利厚生が充実しているかどうかは、求職者にとっても歯科医院を選ぶ判断材料の1つです。そのため、福利厚生の充実が歯科医院のイメージアップにつながり、採用活動にも良い影響を与えます。

2.保険料の負担を抑えられる

歯科医師国保の保険料は、収入によって変動しない一律の金額になっています。また、加入する組合によっても異なるため、院長の収入によってはこの点がメリットになる可能性があります。

ただし、院長や一部被保険者を除くなど条件によって保険料が異なるため、自身の条件をもとに保険料を算出し、ほかの医療保険制度と比較検討してください。

3.任意給付を用意できる

歯科医師国保では、健康保険にはない任意給付という手当が存在します。この手当は、組合院(被保険者・加入者)が入院申請時に受けられる制度で、傷病手当金と出産手当金の2つがあります。

この任意給付はあくまでも「任意」であるため、スタッフ自身で申請するか、院長が依頼を受けて申請しなければ、給付金を受け取れません。

この制度によって、院内スタッフは傷病や出産によって業務に従事できない場合でも、手当を受け取れるため、安心感が得られます。こうした安心感が、スタッフの離職を抑制する要素の1つになるのではないでしょうか。

院長にとって歯科医師国保に加入する・注意点は3つ

歯科医師国保に加入する院長にとっての注意点を紹介します。主な注意点は次の3つです。

  1. 加入は4人までと限られる
  2. 自身の勤務先で診療を受ける際は適用されない
  3. 家族人数分の保険料を支払う必要がある

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.加入は4人までと限られる

歯科医師国保は最大4人までしか加入できません。そのため、歯科医院の従業員数が5人以上の場合、協会けんぽ(社会保険)に加入しなくてはなりません。

このように、歯科医院内の従業員数によって、歯科医師国保に加入できない場合があるため、小規模な医院でない限りは十分な恩恵を受けられない点が注意点といえます。

一部の例外もありますが、基本的には4人までしか加入できないという点を覚えておく必要があります。

2.自身の勤務先で診療を受ける際は適用されない

歯科医師国保も医療期間で保険証を掲示することで、窓口負担を3割におさえられますが、自身の勤務先では適用されないという注意点があります。

基本的に健康保険とは異なり、勤務先の歯科医院にてこの保険料を負担する義務はありませんが、場合によってはスタッフから要望として挙がるかもしれません。その場合、何割か負担するなどの支援を検討する必要があります。

また、求職者からも同様の問い合わせを受ける可能性があり、採用のために歯科医院での負担を強いられる可能性も考えられます。

3.家族人数分の保険料を支払う必要がある

歯科医師国保では、扶養家族も保険料が設定されているため、扶養家族の人数が増えるごとに保険料が増加してしまいます。そのほか、世帯ごとの加入が原則のため、同世帯で国民健康保険に加入している人は歯科医師国保に変更が必要です。

これらは開業して間もない歯科医院の院長にとっては、経済的な負担から大きなデメリットである可能性が高いといえます。

歯科医師国保でよくある2つの質問

歯科医師国保について理解できたところで、次はよくある質問を2つ紹介します。

  • 【質問1】歯科医師国保に加入できないクリニックとは?
  • 【質問2】組合別の保険料の目安は?

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

【質問1】歯科医師国保に加入できないクリニックとは?

歯科医師国保への加入資格を持つには、各都道府県の歯科医師会に所属する必要があります。歯科医師会へ加入していない歯科医院では加入が認められません。

各都道府県によって運営団体が異なるため、どの組合に加入するのかは確認が必要になります。全国でも最も大きい組合は、全国歯科医師国民健康保険組合が保険者となり、運営・管理を行っています。

【質問2】組合別の保険料の目安は?

主要組合別の保険料の目安を紹介します。各組合の保険料は以下の通りです。

【大阪府歯科医師国民健康保険組合】

保険料(月額)
甲種組合員(管理) 32,700円(38,100円)
甲種組合員(勤務) 27,700円(33,100円)
甲種組合員の家族 12,900円(18,300円)
乙種組合員第1 22,200円(27,600円)
乙種組合員第2 19,400円(24,800円)
乙種組合員の家族 12,900円(18,300円)

※( )内の金額は、介護保険第2号被保険者の保険料です。
参考:大阪府歯科医院国民健康保険組合|保険料

【北海道歯科医師国民健康保険組合】

保険料(月額)
第一種組合員 20,100~49,400円
第1種世帯員 10,200円
第2種組合員(勤務歯科医師) 19,900円
第2種組合員(歯科医師以外) 16,800円
第2種世帯員 9,100円
第2種世帯員(ひとり親家族) 5,900円
高齢者組合員(第1種組合員で75歳以上になった者) 3,000円

参考:北海道歯科医師国民健康保険組合|保険料

【愛知県歯科医師国民健康保険組合】

保険料(月額)
正組合員 20,900~48,900円
正組合員家族 13,200円
準組合員 13,200円
準組合員家族 11,700円
  • 正組合員とは一般社団法人愛知県歯科医師会の会員であること
  • 準組合員とは正組合員の所属する医療機関に勤務するもの

参考:愛知県歯科医師国民健康保険組合|保険料

【愛知県歯科医師国民健康保険組合】

保険料(月額)
第1種組合員 8,000円
第2種組合員(歯科医師) 15,000円
第2種組合員(歯科医師以外) 8,000円
家族 5,000円

参考:三重県歯科医師国民健康保険組合|保険料

まとめ

この記事では、歯科医師国保の概要や健康保険との違いについて紹介しました。歯科医師国保へ加入することによって、歯科医院の院長にはいくつかメリットとデメリットが存在しています。

デメリットについては、歯科医院の規模や院長の家族構成にもよるため、必ずしもデメリットになるとは限りません。ただし、メリットについては、新人スタッフの雇用や既存スタッフへの待遇改善による効果があるといえます。

これら待遇を変えることが、院内スタッフのモチベーション向上にもつながるため、歯科医院の院長はスタッフの要望をキャッチし、働きやすい環境を整えることも大切ではないでしょうか。

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