訪問歯科とは?受診するメリット・デメリットや診療内容を解説

訪問歯科とは?受診するメリット・デメリットや診療内容を解説

2025年08月19日

高齢や障がい、疾患などにより通院が困難な方が増える中、訪問歯科の重要性がますます高まっています。医療と介護の連携が求められる地域包括ケアの現場では、歯科医師・歯科衛生士が在宅や施設へ出向き、継続的な口腔ケアを実施する体制づくりが重要です。

そこで本記事では、訪問歯科の基本的な制度や診療内容、対応範囲、保険の取り扱いなどを解説します。

Dentis編集部

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株式会社メドレー Dentis編集部

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訪問歯科とは

訪問歯科とは、歯科医院への通院が困難な方を対象に、歯科医師や歯科衛生士が自宅や高齢者施設などへ出向いて診療を行う医療サービスです。対象は高齢者や要介護者に限らず、障害や持病により移動が難しい方にも広がっています。

診療内容は虫歯や歯周病の治療をはじめ、入れ歯の調整や作製、口腔内の清掃、さらには嚥下機能の訓練など多岐にわたります。住み慣れた自宅で安心して治療を受けられることから、患者本人だけでなく、家族や介護者にとっても負担の軽減につながります。

近年は地域包括ケアの重要性が高まっており、訪問歯科の果たす役割もますます大きくなっています。医療と介護の連携を前提に、継続的な口腔ケアを提供できる体制づくりが今後さらに求められるでしょう。

訪問歯科を受診するメリット・デメリット

訪問歯科は重要な医療的支援となる一方で、提供する側にとっても診療体制や設備面に工夫が求められる分野です。ここでは、訪問歯科を受診する側の主なメリットとデメリットを整理します。

訪問歯科を受診するメリット

訪問歯科の主なメリットは、患者本人や介護者の負担を大きく軽減できる点にあります。特に高齢者や障がいのある方、認知症の方など、移動によるストレスが大きいケースにおいては、住み慣れた環境での診療が心理的安定につながります。

また、定期的な訪問によって口腔ケアの質を維持できるため、誤嚥性肺炎や口腔内感染のリスク低下、食事機能の改善など、全身の健康維持も期待できるでしょう。さらに、介護者だけでなく家族全員での予防意識向上にもつながる点は、歯科医療の継続性という観点からも大きな意義があります。

訪問歯科を受診するデメリット

訪問に伴う交通費や診療加算など、保険適用外の費用が発生することで、患者の自己負担が増える可能性があります。また、持参可能な診療機材には限りがあるため、医院で行えるような精密検査や処置には対応しきれない場合もあるでしょう。診療計画の立て方や緊急時の連携体制も重要な検討事項です。

さらに、訪問は1日あたりの対応可能件数に制限があるため、スケジュール調整の煩雑さや患者希望との調整が課題となります。訪問診療の導入にあたっては、こうした現場の運用負荷も含めた体制設計が求められます。

訪問歯科の対象者

訪問歯科は、すべての患者に提供できるサービスではなく、対象には一定の要件があります。ここでは「訪問歯科を利用できる人」「訪問歯科を利用できない人」について詳しく解説します。

訪問歯科を利用できる人

訪問歯科の対象となるのは、疾病や障がい、加齢に伴う要介護状態などにより、自力での通院が難しいと認められる患者です。たとえば、寝たきりの方や歩行困難な方、認知症の進行によって外出が困難なケースなどが該当します。

診療場所については、患者が日常的に寝泊まりしている場所であることが前提とされています。例えば、自宅や介護施設、入院中の医療機関などです。

訪問が保険適用となるのは、原則として歯科医院から半径16km以内です。半径16kmを超える場合は保険外診療となる可能性があるため注意してください。ただし、地域的に訪問対応可能な医院が存在しないなど、特別な事情がある場合には例外的に保険適用が認められるケースもあります。

訪問歯科を利用できない人

訪問歯科の対象とならないのは、自力での通院が可能な方です。病気や障がいがあっても、日常的に外出ができ、歯科医院までの移動に支障がない場合は、訪問診療の適用外です。

また、デイサービスやデイケア、障がい者通所施設など、「通う場所」に一時的に滞在しているケースも対象外となります。これらの施設は「居住していない場」とみなされるため、訪問診療は原則認められません。診療が必要な場合は、患者が自宅などに戻られたタイミングでの対応となります。

訪問歯科の診療内容

訪問歯科で提供される診療内容は多岐にわたりますが、院内での治療と比べて制限もあります。ここでは「訪問歯科でできること」「訪問歯科でできないこと」を解説します。

訪問歯科でできること

訪問歯科では、歯科医院と同等の基本的な治療や口腔ケアが可能です。具体的には、虫歯の治療(充填・補綴)、歯周病の検査・処置、入れ歯の作製・調整・修理、必要に応じた抜歯など、保険適用内の診療項目が中心となります。

また、専門的な口腔ケアや摂食・嚥下リハビリテーションなども実施されており、誤嚥性肺炎の予防や食事機能の維持・改善に役立っています。

訪問歯科でできないこと

訪問診療には対応が難しい処置もあります。たとえば、以下の治療は困難です。

  • レントゲンやCTなどの精密画像診断機器を必要とする検査
  • 全身麻酔を伴う外科的処置
  • インプラント埋入や矯正治療など高度な設備と技術を要する治療

また、専門的な口腔外科処置や悪性疾患(口腔がん等)の精密検査・治療が必要なケースでは、外来医療機関への連携や紹介が必要です。

緊急性の高い歯痛、出血、外傷などの急性症状においても、訪問先で即時に対応できる範囲には限界があるでしょう。

訪問歯科の治療費

訪問歯科の治療費は、医療保険と介護保険が適用されます。ここでは訪問歯科における費用の仕組みや自己負担の目安、保険適用の範囲外となるケースについて解説します。

訪問歯科も医療保険が適用される

訪問歯科診療は、外来と同様に医療保険の対象となっており、患者は自己負担割合(1~3割)に応じた費用で治療が受けられます。虫歯治療や抜歯、歯石除去、義歯の作製・調整といった基本的な処置は、保険点数に基づいて算定されます。

さらに、訪問診療には「歯科訪問診療料」や「在宅患者歯科治療時医療管理料」などの加算が適用され、診療の実施場所や対象人数に応じて点数が異なる仕組みです。たとえば、同一建物内で複数の患者を診療する場合は、個別対応よりも低い点数で計算されます。

また、要介護認定を受けている患者には、介護保険による「居宅療養管理指導費」も併用可能です。歯科医師や歯科衛生士による定期的な口腔ケアや指導を、在宅でも提供できるようになります。

健康保険が適用外になるケース

訪問歯科であっても、すべての処置が保険適用になるわけではありません。歯科医院から訪問先までの距離が16kmを超える場合には、原則として保険適用外となります。

また、セラミック義歯やインプラントなど、自由診療に該当する治療や材料を選択した場合も、健康保険の対象外となります。

交通費や出張費が請求される場合もある

交通費・出張費については、保険制度上の定めがないため、医院側の裁量で実費請求が可能です。ただし、請求する場合は事前に患者・家族へ説明し、同意を得ておく必要があります。

請求しない方針をとる医院も多いため、あらかじめ自院の運用方針を決めておきましょう。

まとめ

訪問歯科は、通院が難しい患者に対して口腔ケアを実施し、誤嚥性肺炎の予防や全身の健康維持に貢献する重要な取り組みです。今後、地域包括ケアの流れの中で、ニーズはさらに高まっていくでしょう。

対応を検討されている歯科医院にとっては、診療報酬の制度理解や訪問体制の整備、ケアマネージャーや医療機関との連携など、実務面の準備が重要です。自院のリソースや地域の状況に応じたかたちで、無理のない運用を設計し、信頼される訪問診療の体制を築いていきましょう。


<参考URL>

https://www.lifedc-takarazukaminamiguchi.com/content/586/

https://www.nakamura-sika.net/dentalblog/404/

https://e-hayashi-dental.com/837/

https://kure-90.com/16306404645403

https://houmonshika-odcgp.com/visit/merit_demerit/

https://theha.com/diary-blog/blog/13688

https://zaitakkuiryou.com/service/%E8%A8%AA%E5%95%8F%E6%AD%AF%E7%A7%91/

https://okazaki-dc.jp/blog/house-call-dentistry/

https://midori-osaka.com/2024/10/25/

https://dentis-cloud.com/blog/home-dentistry-flow

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