【歯科医院向け】日本における電子カルテ標準化の現状|普及目標やメリット、デメリットも徹底解説!
2023年12月04日
電子カルテの標準化により、医療機関同士の情報共有がスムーズになり、医療の質向上やマッチングが容易になるなど、複数のメリットがあります。
本記事では、電子カルテ標準化の現状や標準化のメリットについて解説します。また、電子カルテ導入の際の注意点についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
INDEX
- 日本における電子カルテ標準化の現状
- 電子カルテの導入率は?
- 医療情報システムに標準化が求められる理由
- 電子カルテの普及目標
- 歯科医院の電子カルテを標準化する4つのメリット
- 1.自院での情報共有がスムーズになる
- 2.新システムの導入・移行が容易になる
- 3.問診の効率化につながる
- 4.院外とのデータ連携が容易になる
- 電子カルテを導入する際の注意点は4つ
- 1.導入・維持にコストがかかる
- 2.操作方法の周知が必要になる
- 3.個人情報の取り扱いが難しくなる
- 4.停電時に利用できない場合がある
- 電子カルテの標準化でよくある3つの質問
- 【質問1】「医療DX令和ビジョン2030」とは何?
- 【質問2】「骨太の方針2022」とは何?
- 【質問3】電子カルテの導入に使える補助金はある?
- まとめ
日本における電子カルテ標準化の現状
ここでは日本における電子カルテ標準化の現状について解説します。主な内容は次の3つです。
- 電子カルテの導入率は?
- 医療情報システムに標準化が求められる理由
- 電子カルテの普及目標
それぞれについて詳しくみていきましょう。
電子カルテの導入率は?
厚生労働省の「医療施設調査」2020年の結果によれば、病院の規模による電子カルテの普及率には明らかな差が生まれています。
具体的には、400床以上の大規模な一般病院では、電子カルテの導入率は91.2%と進んでいますが、200床未満の小規模な一般病院では48.8%、一般診療所では49.9%と、50%に満たない結果です。
2017年度からは普及率が増加しているものの、歯科医院や診療所では、紙カルテの記載の自由度や、運用コストなどを理由に未だ多くの医院で紙カルテが用いられています。
参考:厚生労働省|今後の電子カルテ情報等の標準化に向けた進め方について
医療情報システムに標準化が求められる理由
昨今では、よりよい医療社会の実現に向け、医療機関に蓄積されたデータを活用した新しいサービスの創出が求められています。よって、医療情報システムの標準化が鍵を握るわけです。
共通規格に準拠する標準化が広がれば、すべての施設やベンダーがデータ連携に参画できます。また、内閣府が公表した「経済財政運営と改革の基本方針2022」では、PHR事業における電子カルテの標準化の必要性についても指摘されました。
高齢者人口の増加に伴い、医療と介護への負担が増大しています。質が高く、切れ目のない医療提供を実現するためには、医療情報システムの標準化がポイントといえます。
電子カルテの普及目標
電子カルテの普及目標は、2026年度までに80%、2030年度までに100%を目指しています。しかしながら、電子カルテの標準規格であるHL7FHIRを導入している医療機関が限定されており、未導入の施設とのデータ連携が難しい現状があります。
また、すべての電子カルテがHL7FHIRに準拠しているわけではなく、紙の運用が残る医療機関も多いため、普及スピードの加速化が必要な状況です。
そこで、安全なHL7FHIR準拠のクラウドベース電子カルテを開発し、補助金などの支援が提案されています。目標達成に向けた具体的な標準化項目は、以下の4つです。
- 閲覧権限を設定する機能や閲覧者を患者自身が確認できる機能を実装する
- 診療を支援し、作業を軽減する機能を実装する
- 検査会社への発注や受け取りなど検査会社との情報連携の方法を決める
- 介護事業所等にも医師が許可した電子カルテ情報について共有できる
普及目標の実現に向け、新規に電子カルテを導入する際の補助金が創設されるとともに、すでに電子カルテが導入されている医療機関に対しても、買い替えやバージョンアップの補助金が利用できるかが注目されています。
歯科医院の電子カルテを標準化する4つのメリット
日本における電子カルテ標準化の現状について理解できたところで、次は歯科医院の電子カルテを標準化するメリットについて紹介します。主なメリットは次の4つです。
- 自院での情報共有がスムーズになる
- 新システムの導入・移行が容易になる
- 問診の効率化につながる
- 院外とのデータ連携が容易になる
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.自院での情報共有がスムーズになる
電子カルテを標準化するメリットの1つに、院内の情報共有が容易になる点が挙げられます。電子カルテはメーカーによって規格がさまざまであり、情報連携する関連システムとの親和性が限定されている場合も少なくありません。
電子カルテの標準化により、関連システムとの連携が容易になり、スムーズな診療が提供できます。
クラウド歯科業務支援システムDentisは、サブカルテの機能により、レントゲン等の画像ファイルから各種帳票までを患者ごとに一元管理でき、院内の情報共有に役立ちます。
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2.新システムの導入・移行が容易になる
歯科医院の電子カルテを標準化するメリットの1つは、新しいシステムの導入や移行が容易になる点です。電子カルテをはじめとする従来の医療情報システムは、複数の異なる企業のシステムを接続・稼働しているため手間と費用が増加する傾向にあります。
しかし、電子カルテの標準化が進むと、新しいシステムの導入や移行時に必要なデータ移行が容易になり、コスト削減が期待されます。
3.問診の効率化につながる
歯科医院の電子カルテ標準化によって、問診の効率化も可能です。電子カルテと連携したWeb問診へ事前入力してもらえば、来院時点で患者の症状がわかるようになり、スムーズな診療が可能です。
また、紹介状などを作成する際にも、電子カルテの情報をほかの歯科医院に共有できるため、正確な引継ぎを実現できます。
4.院外とのデータ連携が容易になる
標準化された電子カルテではない場合、規格やデータ形式が異なるため、他院とのとのデータ共有が難しい場合があります。
電子カルテの標準化により、他院とのスムーズなデータ連携が可能となり、地域医療に貢献できます。
電子カルテを導入する際の注意点は4つ
電子カルテ導入にあたっての主な注意点は、次の4つです。
- 導入・維持にコストがかかる
- 操作方法の周知が必要になる
- 個人情報の取り扱いが難しくなる
- 停電時に利用できない場合がある
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.導入・維持にコストがかかる
電子カルテの導入には高いコストがかかります。特にオンプレミス型の電子カルテは、クリニック内にサーバーを設置し専用のソフトウェアをインストールするパソコンも準備する必要があるため、初期費用として300〜500万円ほどが必要になるようです。
さらに、メーカーによって異なりますが、約5年ごとのシステム更新でも初期費用と同等のコストがかかる場合があります。このコスト面の対処が、歯科医院で電子カルテの導入をためらう1つの要因となっています。
導入を検討する際には、電子カルテの導入による効果について検討し、費用対効果の面から判断するようにしてください。
参考:日経メディカル「第20回 【医師390人に聞いた】電子カルテ導入に伴うイニシャルコスト、ランニングコスト」
2.操作方法の周知が必要になる
電子カルテの導入にあたって注意すべき点の1つは、操作方法の周知が必要であることです。電子カルテは、パソコンやタブレット端末を使用して診療情報の記録や閲覧を行います。そのため、最低限の操作スキルは必須であり、操作のトレーニングやレクチャーの時間を設けなければなりません。
日々の忙しい診療のなかで時間を見つけて準備をするのは、腰が重いかもしれません。しかしながら、オペレーションの周知とトレーニングに十分な時間を割くことが、スムーズな導入と運用につながります。
3.個人情報の取り扱いが難しくなる
電子カルテの導入でよく議論されるのが、個人情報の安全性についてです。たしかに、デジタル化を進めるとハッキングによる情報漏えいは、懸念される部分ではあります。
そこで考慮すべきなのは、導入する電子カルテがセキュリティに優れているかどうかです。具体的には、データ暗号化や定期的なセキュリティチェックが機能しているかを確認する必要があります。
また、適切な運用のためには、スタッフ教育も重要です。誤操作による情報漏えいを防ぐため、定期的な教育が必要です。
4.停電時に利用できない場合がある
電子カルテは停電時に利用できないリスクが存在します。大規模な病院では無停電電源装置(UPS)を導入している場合がほとんどですが、そのような備えがない歯科医院では、停電時の対応が困難です。
対策として、緊急時に備えて紙のカルテを手元に置き、すぐに切り替えられるようにしておくことや、院内ネットワークを必要としないクラウド型の電子カルテの導入を検討することが重要です。また、準備だけではなく、院内で緊急時の対応計画を立て、定期的な訓練も必要です。訓練を積み重ねていけば、停電や災害が発生した場合でも、慌てず対応ができます。
Dentisはクラウド型の電子カルテ・予約管理一体型の歯科業務支援システムです。iPadなど携帯型端末からクラウドに接続することで停電時などでも運用が可能です。
電子カルテの標準化でよくある3つの質問
電子カルテの標準化について、よくある質問は次の3つです。
- 【質問1】「医療DX令和ビジョン2030」とは何?
- 【質問2】「骨太の方針2022」とは何?
- 【質問3】電子カルテの導入に使える補助金はある?
それぞれの内容についてみていきましょう。
【質問1】「医療DX令和ビジョン2030」とは何?
「医療DX令和ビジョン2030」とは、2030年を見据えて、医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する国の施策です。
本施策は、医療の現場でのデジタル技術の活用を推進することを目的としています。先進的な技術を取り入れることで、患者の診療体験の向上や医療従事者の業務効率化に取り組むものです。
具体的には、以下3つの骨格をもとに医療DXの推進が図られる予定です。
- 「全国医療情報プラットフォーム」の創設
- 電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)
- 「診療報酬改定DX」
人工知能やIoTの技術を活用したリモート医療の推進や電子カルテの導入、医療データの共有化を進める取り組みが含まれています。「医療DX令和ビジョン2030」を実現するには政府や医療機関、IT企業など、多くの関係者が協力して取り組む必要があります。
参考:自民党|「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて
【質問2】「骨太の方針2022」とは何?
「骨太の方針2022」は、2022年6月7日に日本政府によって閣議決定された経済臨時運営の基本方針です。本方針は特に医療に対する政策に大きな影響を持つ内容となっています。
主なポイントとしては、オンライン資格確認の導入、保険証の原則廃止、全国医療情報プラットフォームの創設などです。具体的には、2023年4月から保険医療機関や薬局にオンライン資格確認の導入を原則として義務付けたのは記憶に新しいところです。
導入が進んでいけば、患者がマイナンバーカードを保険証として利用するための支援措置見直しも予定されています。2024年度中には保険証発行の選択制を導入し、将来的には保険証の原則廃止を目指しています。
【質問3】電子カルテの導入に使える補助金はある?
電子カルテの標準化に関連する補助金については、厚生労働省が検討段階で詳細はまだ決まっていない状況のため、今後の動向に注目が必要です。
しかし、厚生労働省が発表する補助金とは別に、ITツール導入の費用を一部サポートする制度として「IT導入補助金」があります。電子カルテ導入も、業務効率化や生産性向上に直結するため、本制度の対象となる可能性が高いといえます。
参考:IT導入補助金2023
興味を持った歯科医院の方は、補助金の詳細や申請方法について、電子カルテメーカーに問い合わせてください。
なお、メドレーはIT導入支援事業者となり、Dentisの導入においてIT導入補助金の活用が可能です。
まとめ
この記事では、電子カルテ標準化の現状や標準化のメリット、電子カルテ導入の際の注意点について解説しました。
電子カルテの標準化によって、院内での情報共有がスムーズになり、システムの導入や移行作業が容易になるというメリットがあります。ただし、電子カルテの導入には、初期投資費用やセキュリティ対策などの注意点もあります。
これらの情報を総合的に判断して、効率的な電子カルテシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
クラウド歯科業務支援システムDentisは、サブカルテの機能により、レントゲン等の画像ファイルから各種帳票までを患者ごとに一元管理でき、院内の情報共有に役立ちます。
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