【歯科医院向け】訪問歯科診療とは?主な診療内容や必要な資格、よくある質問を解説します!

【歯科医院向け】訪問歯科診療とは?主な診療内容や必要な資格、よくある質問を解説します!

2023年08月23日

訪問歯科診療とは、高齢者や障害者など、歯科医院に通院できない方の自宅や施設に出向いて行う歯科診療のことです。

訪問歯科診療には、通常の歯科診療とは異なる特徴や制度があります。この記事では、訪問歯科診療に関する基本的な知識やよくある質問を解説します。訪問歯科診療を実施するか検討中の歯科医院の方は、ぜひ参考にしてみてください。

訪問歯科診療とは?

訪問歯科診療とは、歯科医師や歯科衛生士が、通院が困難な患者のお宅や施設に出向いて、歯科診療を行うサービスです。

訪問歯科診療の対象者

訪問歯科診療の対象者は、通院が困難な方です。具体的には、以下のような方が該当します。

  • 高齢者や障害者で、自宅や施設に介護が必要な方
  • 重度の身体障害や病気で、移動が困難な方
  • 認知症や精神疾患などで、歯科医院に行くことに抵抗感がある方
  • 交通手段が不便で、歯科医院に通うことが難しい方

訪問歯科診療の対象者は、歯科医師の判断によって決まります。

訪問歯科の実施状況

在宅療養支援歯科診療所の対象者数は、令和3年9月30日時点で約11.7万人、前回調査から18.3%増加しています。この増加は高齢化社会の進展や介護保険制度の拡充によるもので、在宅や施設での歯科医療の需要が高まっていることを示しています。

対象者数の内訳では、在宅者が約6.5万人(55.4%)、施設入所者が約5.2万人(44.6%)で、在宅者の割合が半数を超えていることが特徴です。都道府県別では東京都が最も多く、次いで愛知県、大阪府、神奈川県、埼玉県となっています。

全国の歯科診療所の約2割(約13,000ヶ所)が訪問歯科サービスを提供しており、その数は増加傾向にあります。
参考元:『在宅療養支援歯科診療所における在宅歯科医療に関する調査報告書』(公益社団法人日本歯科医師会・日本歯科総合研究機構)

訪問歯科を実施する診療所数

訪問歯科を実施する歯科診療所は、2021年9月時点で全国約13,000ヶ所存在し、全国の歯科診療所の割合の約22%です。2019年12月の約11,080ヶ所から約2000ヶ所増加したということになります。

開設主体別に見ると、個人が開設した診療所が最も多く、全国の訪問歯科診療所の約91.8%です。

訪問歯科は増加傾向にありますが、開設主体による大きな格差が存在しています。
参考元:在宅歯科医療に関する調査|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

訪問歯科の主な診療内容は4つ

訪問歯科診療では、虫歯や歯周病の治療と予防をはじめ、入れ歯の作製や修理・調整、口腔ケアなど、一般的に歯科医院の院内と同様の診療が行われています。

1.虫歯や歯周病の治療

訪問歯科診療では、虫歯や歯周病の治療が行われます。患者の体力や状況に合わせて治療内容や回数を調整する必要があります。

診療は滅菌器具や使い捨て器具の使用が必須で、感染防止が大切です。訪問診療では、水道や滅菌器が使用できない場合もあるため、事前に準備が必要です。

これには滅菌済みの器具を封入した袋や使い捨ての器具を持参すること、ポータブルタンクやポンプを用いて水を供給することなどが含まれます。

診療中は、患者の口腔内の視野が重要です。しかし、訪問診療では患者が寝たきりや頭部を動かせない場合もあるため、ヘッドライトやミラーを用いて視野を確保し、枕やタオルで頭部を支えて診療します。

2.嚥下リハビリ

訪問歯科診療における嚥下リハビリテーションは、食事や飲み込みに困難を抱える患者の口腔機能を改善する訓練です。

嚥下リハビリテーションは患者の日常生活に深く関わるため、訪問診療では患者の生活環境や食事状況の観察、及び介護者や家族との連携が重要です。

具体的には、患者が普段好んで食べる食物や食事の様子を確認したり、介護者や家族に嚥下障害の症状と対策を説明します。

患者の体力や意識の低下、興味や動機付けの低さが問題となることもあります。その場合、適切な刺激やフィードバックを提供したり、患者の好きな食物や音楽を活用することが必要です。

嚥下リハビリの効果測定は難しく、嚥下障害の程度を評価するにはレントゲンや内視鏡などの高度な検査が必要ですが、訪問診療では行えない場合が多くあります。そのため、主観的な指標や目安を用いることが多く、患者自身の評価や介護者や家族の観察記録が参考にされます。

3.入れ歯の調整や製作

訪問歯科診療では、入れ歯のフィット感や動きをチェックし、調整や新たな入れ歯の製作が行われます。そして、入れ歯の手入れ方法の指導も行われます。

ただし、入れ歯の調整や製作には専用の器具や材料が必要です。しかし、訪問診療では携行可能なものに限定されます。これにより、一部の工程は外部の専門家に委託することもあります。

入れ歯の調整や製作は患者の協力が必要です。訪問診療では患者の体力や意識が低下していたり、寝たきり状態の場合もあります。その際は、介護者や家族の協力を得て、患者の姿勢や頭部を支える必要があります。

入れ歯の調整や製作は清潔な環境で行うことが必要です。訪問診療では、治療場所が衛生的でなかったり、水道や電源が利用できない場合もあります。その場合、消毒液や使い捨ての器具を用意し、バッテリー式の器具を使用する等の対策が必要です。

4.口腔ケアや肺炎予防

訪問歯科診療では、歯ブラシやガーゼを使用して口の中を清掃し、抗菌剤や保湿剤を塗布します。
また、口腔内の状態と適切なケア方法についてアドバイスも行います。

患者の体位や姿勢にも配慮が必要です。寝たきりの患者や首を起こすことが困難な患者の場合は、枕やタオルで頭部を支える、または患者を横向きに寝かせるなどの対応が必要です。また、誤嚥を防ぐために、水分や唾液の吸引、または喉頭部の圧迫も必要となります。

口腔ケアは、介護者や家族の協力も大切です。口腔ケアの方法や頻度を指導し、一緒に行うことがあります。また、口腔内の変化や異常に気づけるよう説明することも重要です。

Dentis歯科業務支援システムは、患者の口腔ケアの状況をiPadなどで記録することができ、適切な口腔ケアの提案やアドバイスに活用できます。
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訪問歯科診療に必要な資格

訪問歯科診療には、以下のような資格が必要です。

【歯科医師】

訪問歯科診療を行うには、歯科医師免許と保険医療機関の届出が必要です。
また、日本訪問歯科協会ホームページへの掲載権などが得られる日本訪問歯科協会の認定医になるには、研修や医学会での発表なども必要になります。

【歯科衛生士】

訪問歯科診療に限らず歯科衛生士には、歯科衛生士資格が必要です。歯科医師の指示の下で訪問歯科診療に従事します。
また、訪問歯科協会に登録できる権利を得られる日本訪問歯科協会の認定訪問歯科衛生士になるには、認定講座を修了する必要があります。

訪問歯科診療でよくある5つの質問

次に訪問歯科診療でよくある質問をまとめました。

【質問1】訪問歯科における今後の見通しは?

訪問歯科は、高齢化社会や在宅医療のニーズに応えるために、今後もますます重要な役割を担っていくと考えられます。2025年には、日本人の4人に1人が75歳以上の後期高齢者となり、通院が困難な方が増加すると予測されているためです。

また、厚生労働省は、在宅での医療が受けられる体制強化に踏み出しており、訪問歯科もその一環として推進されています。訪問歯科は、口腔機能の維持・改善や口腔ケアによって、全身の健康やQOL(生活の質)の向上や医療費の抑制に寄与できます。

そのため、訪問歯科を必要とする方や関係者からの期待は高まっており、訪問歯科を提供する歯科医師は増加傾向にあります。

しかし、訪問歯科に対する認知度や理解度はまだ十分ではなく、訪問歯科を受けられる方や提供できる医療機関はまだまだ少ないのが現状です。そのため、訪問歯科の普及・啓発活動や質の向上・担保を図る取り組みが必要とされています。

【質問2】歯科に通院するより支払い額が高くなる理由は?

訪問歯科では、通院する場合と比べて、以下のような費用が加算されるため、支払い額が高くなります。

  • 訪問歯科診療料

    移動時間や距離に応じて算定される費用。

  • 在宅療養支援歯科診療所加算

    在宅療養支援歯科診療所として届出をしている医療機関が算定できる費用。

  • かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所加算

    かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所として届出している医療機関が算定できる費用。

  • 在宅歯科医療推進加算

    在宅歯科医療推進型施設基準を満たしている医療機関が算定できる費用。

  • 地域医療連携体制加算

    地域医療連携体制基準を満たしている医療機関が算定できる費用。

これらの費用は、訪問歯科を円滑かつ安全に行うために必要な経費や人件費などをカバーするためのものです。訪問歯科では、通院する場合と比べて、治療にかかる時間や回数が多くなる場合もあります。そのため、治療内容によっては、治療費も高くなる可能性があります。

【質問3】訪問歯科における診療開始までの流れは?

訪問歯科における診療開始までの流れは、以下のようになります。

  • 電話で申し込み

    訪問歯科を提供する医療機関は、患者やその関係者からの申し込みを受け付けます。申し込みの際には、患者の基本情報や症状や希望などを聞き取ります。

  • 訪問日時の調整

    担当者を決めて患者と訪問日時を調整します。訪問日時は、患者の都合に合わせて決めます。

  • 初回訪問

    担当者は、初回訪問で患者の口腔内の状態を診断し、治療計画や費用の説明をします。初回訪問では、初期治療や口腔ケアも可能です。

  • 継続訪問

    治療計画に沿って定期的に訪問し、治療や口腔ケアをします。治療内容や頻度は患者の状態や希望に応じて調整します。

  • 治療終了

    治療が完了したら、治療結果や今後の口腔ケアの方法などを説明します。また、必要に応じて定期的なフォローアップや再診も行います。

【質問4】健康保険の適用外となるケースとは?

健康保険の適用外となるケースは、以下のような場合です。

  • 通院可能な方が利用する場合

    訪問歯科は、通院が困難な方を対象としています。通院可能な方が利用する場合は、健康保険が適用されません。

  • デイサービス先で利用する場合

    デイサービスは、患者が寝泊りし療養をなさっている場所ではありません。デイサービス先で利用する場合は、健康保険が適用されません。

  • 病院内に歯科がある場合

    法令により、病院内に歯科がある場合は、その歯科で治療を受けることが原則となっています。病院内に歯科がある場合は、訪問歯科は健康保険が適用されません。

  • 自費治療を選択する場合

    保険診療ではカバーできない高度な技術や材料を使用する自費治療を選択する場合は、健康保険が適用されません。たとえば、インプラントや審美歯科などが該当します。

【質問5】利用者に対して交通費や出張費の実費請求ができる?

交通費や出張費は、訪問歯科診療料とは別に算定される費用です。交通費は、訪問先までの移動にかかった実際の経費を指し、時間に応じて決められる一定の金額を指します。

算定方法や金額は、医院によって異なりますが、一般的には以下のような基準があります。

  • 交通費は、公共交通機関を利用した場合はその運賃、自家用車を利用した場合はガソリン代や駐車料金などを実費で請求する
  • 出張費は、訪問先までの所要時間に応じて、1時間あたり1,000円から2,000円程度を請求する
  • 交通費や出張費の上限額は、1回あたり5,000円から10,000円程度とする


これらの費用は医療保険や介護保険では適用されませんので、利用者が全額自己負担となります。
一部の医院では、診療や治療に関わる料金以外の費用は一切請求しないという方針をとっています。

まとめ

訪問歯科診療は、通院が困難な高齢者や障害者、療養中の患者に対する重要なサービスです。
虫歯や歯周病の治療、嚥下リハビリ、入れ歯の調整や製作、口腔ケアや肺炎予防などの診療が主に行われます。

しかし、訪問歯科診療では管理が難しく、効率的な業務が求められます。その場合、Dentis歯科業務支援システムの活用が有効です。

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