歯科衛生士の新人教育マニュアルに盛り込むべき8つの項目|活用するメリットや作成のポイントもご紹介!

歯科衛生士の新人教育マニュアルに盛り込むべき8つの項目|活用するメリットや作成のポイントもご紹介!

2023年12月04日

多くの歯科医院では、歯科衛生士の教育期間を「3ヶ月」程度にしています。この期間中の教育効果を高めるためには、マニュアルの作成が欠かせません。

本記事では、歯科衛生士の新人教育期間やマニュアルを活用するメリット、マニュアル作成時のポイントについて解説します。また、マニュアルに盛り込むべきポイントについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

歯科衛生士の新人教育期間

歯科衛生士の新人教育期間に関するアンケートによると、55.4%が「3ヶ月間」と回答しています。次に28.7%が「6ヶ月間」と回答しており、約84%の歯科医院で、半年以内に新人教育を終えていることがわかります。

3〜6ヶ月という短い期間で研修を終え自走してもらうためには、効率的な研修が欠かせません。

効率的な研修のために、業務のマニュアル化は非常に重要な要素となります。

参考:クオキャリア「新卒歯科衛生士の新人研修期間は?|101医院に聞きました「新人教育・研修リアル調査」PART.1」

歯科衛生士向けのマニュアルを導入している歯科医院は少ない?

スタッフの入れ替えが少ない歯科医院では、マニュアルを整備していないケースが多いようです。また、実務経験によって必要なスキルは身につけられると考えている院長も多いかもしれません。

しかし、新人歯科衛生士にとって、マニュアルの存在は大きな安心材料であり、採用活動においても「マニュアル完備」という要素は求職者にとって魅力的です。

マニュアルのない歯科医院では、先輩が口頭で指導を行い、新人はメモを取りながら仕事をするのが一般的です。この方法は、先輩にとっては業務の負担が大きく、新人にとっては覚えるのに時間がかかったりと、双方の負担につながります。

歯科衛生士の新人教育でマニュアルを活用する3つのメリット

次は歯科衛生士の新人教育でマニュアルを活用するメリットについて解説します。

  1. 指導者や教育方法を原因とするムラを減らせる
  2. 新人教育にかかる手間や時間を減らせる
  3. 歯科衛生士が自学しやすい

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.指導者や教育方法を原因とするムラを減らせる

歯科衛生士の新人教育において、院長や先輩スタッフが経験や感覚に基づいて指導を行うと、教育のムラが生じるリスクがあります。そこで、マニュアルの活用が重要です。

マニュアルの導入によって、歯科衛生士への指導が画一的にわかり、全員が共通の知識や業務フローの習得が可能です。もちろん、経験に基づく学びやアドバイスは重要ですが、マニュアルであれば、基礎知識や業務手順を確実に伝えられます。

2.新人教育にかかる手間や時間を減らせる

歯科医院の院長や歯科医師、そして先輩の歯科衛生士が新人の育成に関わるには、一定の時間や労力を必要とします。この労力を軽減させるための方法として、マニュアルの活用が有効です。

マニュアルを用意しておけば、指導の手間が減るだけでなく、効果的な研修が実現します。さらに、教育担当者が退職するような場面でも、マニュアルがあれば安心できます。

3.歯科衛生士が自学しやすい

忙しい歯科医院では通常業務に時間が取られ、新人に対して十分な指導ができない場合があります。このような状況では、新人も忙しさや院内の雰囲気から、質問がし辛いと感じている可能性も考えられます。

そこで、自院のマニュアルが整備されていると、歯科衛生士は自らの疑問点や不明点をマニュアルで確認し、自己学習を進める環境の構築が可能です。マニュアルはこのように新人歯科衛生士の自学のサポートとして、効果的なツールといえます。

歯科衛生士の新人教育で活用するマニュアル作成のポイントは4つ

次は歯科衛生士の新人教育で活用するマニュアル作成のポイントについて解説します。

  • 業務の目的や全体の流れがわかるよう記載する
  • 動画やアプリも活用する
  • 業務における判断基準を記載する
  • シンプルかつわかりやすい表現を心がける

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.業務の目的や手順がわかるよう記載する

新人教育におけるマニュアル作成は、単なる業務を理解するための手順書以上の役割を担います。手順に加えて、「仕事の目的」を明確に記載することで、何のためその手順を行うのかという理解が深まるため、新人の業務理解を助けます。

たとえば「歯石除去業務」の場合、業務の目的は「歯石を除去して綺麗な状態にする」です。目的と手順の両方を併記視したマニュアル作成が、新人教育の観点では有効です。

2.動画やアプリも活用する

動画やアプリといったデジタルツールの活用は、歯科衛生士の新人教育に有効です。テキストだけでは伝わりにくい手技や患者対応の微妙なニュアンスも、動画マニュアルの利用によって視覚的に理解できます。

また、アプリを活用すれば、データ管理の効率化も実現し、新人がスムーズに業務を覚え、資料を手元で確認できる環境を整えられます。今後は、このような動向が強まり、さまざまなデジタルツールの活用拡大が予想されているのです。

3.業務における判断基準を記載する

歯科衛生士の新人教育では、業務の流れや内容を示すことはもちろんですが、業務の判断基準を明確にマニュアルに記載することで、よりわかりやすいマニュアルが完成します。たとえば、過去のケーススタディを記載することで、新人は自信を持って判断を下せるでしょう。

さらに、このケーススタディに「なぜそのような判断をするのか」という背景や理由も示されている場合、より理解が得られやすく、新人の自律的な行動を促すことが可能です。

4.シンプルかつわかりやすい表現を心がける

歯科衛生士の新人教育において、マニュアルは重要なツールです。マニュアル作成時に最も大切にすべきは、シンプルかつわかりやすい表現です。

教育担当者が使用している業界用語や専門的な言葉は、新人にとってはまだ理解できないことも多いため、シンプルな言葉選びが重要です。さらに、情報の伝達力を高めるには、マニュアルの視覚的なデザインも考慮する必要があります。

文字だけの説明では理解が難しい場合もあるため、イラストや写真、図表を活用して、情報をわかりやすく伝えることがポイントです。

クラウド歯科業務支援システムDentisは、WEB予約、WEB問診、電子カルテを含む歯科業務が1つのシステムで導入でき、直感的な操作性により、院内のマニュアルの取り込み、整理、閲覧が容易です。

Dentis歯科業務支援システムのサービス資料をダウンロードする

歯科衛生士の新人教育マニュアルに盛り込むべき8つの項目

次は歯科衛生士の新人教育マニュアルに盛り込むべき項目について解説します。それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.自院の基本理念

歯科医院の持つ基本理念は、患者へのサービスやチームの働き方を方向付ける大切な要素です。この理念を新人の歯科衛生士に理解してもらう事で、スタッフの一員になったことを自覚してもらいます。

また、基本理念について理解することで、どのようにすれば自院に貢献できるのかを考えて行動するようになる効果も期待できます。

2.患者への接遇や心づかい

歯科衛生士の役割は、治療だけでなく、患者との良好なコミュニケーションも大切です。特に、患者が不快に思う対応をしてしまうとクレームにつながるおそれがあるため、しっかりと接遇や心づかいに関する教育が必要です。

具体的には、子どもや高齢者、障がいを持つ患者への対応は、その人たちの特性を理解し、正しく対応する必要があります。たとえば、子どもの患者の場合は安心感を与える名前の呼び方や声かけ、治療の恐怖感を与えない配慮などが必要です。

また、高齢者や障害のある患者の場合は、車いすからユニットへの移動時の声かけや介助の心得などを項目に盛り込みましょう。

また、適切な言葉遣いや礼儀、身だしなみなどの日常的なマナーも大切なため、要点を絞ってマニュアルへ取り入れることが重要です。このように、新人歯科衛生士が患者への接遇や心づかいを身につけるためのマニュアルは、細かい部分にも気を配ることで、サービスの質や患者の満足度向上につながります。

3.受付での応対方法

受付での応対は、患者がクリニックを評価する重要な要素です。たとえば、電話応対では、明るく丁寧な第一声を心がけ、適切なクッション言葉を使うスキルが必要です。

対面での受付業務では、患者に安心感をもってもらう礼儀や受付後の問診やユニットへの誘導も、患者の歯科医院に対する印象を大きく左右します。マニュアルには具体的かつ実践的な内容を盛り込むことで、新人歯科衛生士が迅速に実務に対応できる体制を整えることができるといえます。

4.緊急時の対応方法

歯科医院における緊急時の対応は、患者の安全を守るために重要です。院内のスタッフには、予期しない事態にも迅速かつ適切に対応する能力が求められます。

たとえば、診療中に偶発的な事故がおきた場合、まずは患者を安心させることを優先し、状況を落ち着いて説明することが大切です。また、来院中の患者の体調が急変した場合、適切な救急処置が求められます。

さらに、自然災害や医療機器の故障といった突発的な状況にも、冷静に対処することが必要です。火災や地震の際には、患者を安全な場所へ誘導するなど、緊急時対応の知識と技術をマニュアルにまとめ、新人歯科衛生士でも、冷静な対応ができる体制を整えることが、患者の安全確保につながります。

5.自院で使用する用語の略称

歯科医院においては、日常的に多数の専門用語や略称が使用されます。これらは効率的なコミュニケーションを図るためには欠かせません。

しかし、新人歯科衛生士は、これらの用語や略称を理解するのに時間がかかります。そこで、マニュアルに、頻繁に使用される略称のリストやその意味、具体的な使用例などを記載しておくことで、新人歯科衛生士の学習をサポートし、効率的なコミュニケーションが実現します。

6.診療室の管理方法

診療室の管理作業は、診療の前後や休憩時間に行うもので、明確に内容を分けて進めると効率的です。作業内容には、トレー上への機器のセッティングなどがあり、ピンセットやミラー、エキスカベーター、充填機、探針などを正しく配置する必要があります。

さらに、消毒や滅菌についての定義や原則、消毒法と滅菌法の分類を含め、正しい手順の教育が求められます。滅菌袋や滅菌手袋、外科用ガウンの適切な取り扱い方法も、指導が必要です。

7.アシスタント業務に要する基本的な技術と知識

アシスタント業務では、患者と歯科医師をスムーズにつなげる重要な役割があります。そのための基本となる技術や知識を持つことが大切です。

  • バキュームの操作やスリーウェイシリンジの操作

    治療中の口腔内の清潔さやスムーズな治療を進めるために必要。これらの器具の操作は日常の業務で頻繁に使用するため、正しい操作を身につける必要がある

  • 器具の手渡し

    歯科医師との連携をスムーズにするための基本的なスキル。正確かつ安全に器具を手渡すことで、治療の効率が向上する

  • X線写真撮影

    デンタルX線やパノラマックス線写真の撮影技術や、患者のポジショニングに関する知識が必要。特に放射線の扱いは注意が必要となる

  • 麻酔時の補助

    各麻酔法の知識や注射器の正確かつ慎重な取り扱い方法を理解する

これらの器具の正確な名称や取り扱い上の注意点、使用目的を理解することで、スムーズな診療の補助が可能です。

8.薬剤や材料に関する情報

薬剤と材料の使用には特に注意が必要であり、その種類や特性を把握し、正しく使用することが求められます。歯科医院で使用する薬剤には、根管治療薬、齲蝕予防薬、知覚過敏治療薬、PMTC用器材、歯周炎治療薬といったものまで、多岐にわたる薬剤が歯科治療に利用されています。

さらに、材料としては、セメント、仮着材、仮封材として、グラスアイオノマー系レジンセメントの種類なども覚えなくてはなりません。これらの薬剤・材料の正しい知識と適切な取り扱いが、治療の成功を大きく左右する重要な要素といえます。

歯科衛生士における新人教育マニュアルでよくある2つの質問

最後に歯科衛生士における新人教育マニュアルでよくある質問について紹介します。

  • 【質問1】.新人教育で活用するマニュアルの効果を高めるコツは?
  • 【質問2】.歯科衛生士の新人教育はマンツーマンで実施すべき?

それぞれについて詳しくみていきましょう。

【質問1】.新人教育で活用するマニュアルの効果を高めるコツは?

新人教育でのマニュアル活用は、慣れていない業務をスムーズに実施するための手助けとなります。ただし、歯科衛生士の仕事は、テキストだけでは伝えにくい暗黙知も多いため、業務内外のコミュニケーションの場も大切にする必要があります。

具体的には、マニュアルに書かれてあることはもちろん、些細なことでも先輩の歯科衛生士に質問しやすい雰囲気、院長やほかのスタッフに話しかけやすい環境作りを考えましょう。

このような取り組みによって、マニュアルの効果を最大限に引き出すことができます。

【質問2】.歯科衛生士の新人教育はマンツーマンで実施すべき?

歯科衛生士の新人教育において、マンツーマンの指導が効果的とされる背景には、マンツーマンの場合は、新人の教育状況が管理しやすく、本人の苦手なポイントを踏まえて重点的な教育が実施できる点にあります。

しかし、1つの方法やスタイルが正解とは限らないため、医院の規模や教育方針、そして新人のニーズに応じて最適な方法を選ぶことが何より大切です。新人が安心して質問や疑問を解消できる環境を整え、成長をサポートすることが重要といえます。

まとめ

この記事では、歯科衛生士の新人教育期間やマニュアルを活用するメリット、マニュアル作成時のポイントについて解説しました。

歯科衛生士の教育期間として、「3ヶ月」程度を目安としている歯科医院が多いですが、歯科医院の診療内容や教育方針によっても異なるため、自院に最適な期間を設定することが大切です。

また、この期間中の教育効果を高めるためには、マニュアルの作成が欠かせません。マニュアルに盛り込むべきポイントを押さえて、効果的なマニュアルを作成してみてください。

クラウド歯科業務支援システムDentisは、WEB予約、WEB問診、電子カルテを含む歯科業務が1つのシステムで導入でき、直感的な操作性により、院内のマニュアルの取り込み、整理、閲覧が容易です。

Dentis歯科業務支援システムのサービス資料をダウンロードする

ブログ一覧に戻る