
歯科医院の事業承継について、メリット・デメリット、失敗しないための注意点、承継成立までの流れを紹介
2025年02月17日
すべての開業歯科医がいつか直面するのが「事業承継」です。自身にとって最も後悔しない選択ができるように、早めに情報を得ておくことをおすすめします。
そこで今回は歯科の事業承継にあたっての情報をまとめてご紹介。 事業承継形態の種類、承継までの流れなどをご紹介します。
記事監修
株式会社メドレー Dentis編集部
歯科や医療に関する情報をわかりやすく発信しています。システムに関する情報だけでなく、医院経営や最新のトピックについても幅広くお届けしています。
INDEX
- 事業承継とは
- 事業承継・事業継承・事業譲渡・事業売却の違い
- 歯科医院の事業承継形態の種類
- 事業承継のメリット
- 開業コストを抑えられる
- 既存患者を引き継げる
- 事業承継のデメリット
- 設備や施設の老朽化
- ブランディングイメージの定着に時間がかかる
- 歯科医院の継承でよくあるトラブル
- 契約に関するトラブル
- 患者の離脱
- 事業承継にかかる費用
- 歯科医院の事業承継を進めるうえでの流れ
- 歯科医院の現状を把握する
- 承継先を決める
- 承継すること・しないことを決める
- 事業承継計画を立てる
- データの引き継ぎをする
- 売り手がアドバイスをしながら承継後もサポートする
- 歯科医院を継承する際の開設届の手続き
- 現開設者が行う手続き
- 新開設者が行う手続き
- 事業承継を経験した歯科医院の声
- 親族間承継をおこなった歯科医院の体験談
- 従業員承継をおこなった歯科医院の体験談
- 第三者への承継をおこなった歯科医院の体験談
- 歯科医師の高齢化により歯科の事業承継は増えている
- 高齢化が進む歯科医院の抱える課題
- 次の世代がクリアすることで診療所を守る
事業承継とは
事業承継とは、売り手側でいうと「歯科医院経営を自分以外の誰かに引き継ぐこと」です。買い手側の目線では「自分以外の誰かが運営していた歯科医院事業を受け継ぐこと」となります。
事業承継・事業継承・事業譲渡・事業売却の違い
事業承継に似た言葉で「事業継承・事業譲渡・事業売却」があります。それぞれの意味合いは以下の表の通りです。
名前 | 意味 |
---|---|
事業承継・事業継承 | 事業承継は歯科医院の理念やビジョンを引き継ぐこと。事業継承は歯科医院の経営権や財産を引き継ぐ こと。ほぼ同義の言葉であるが、法律上や税制上では「事業承継」が用いられる。 |
事業譲渡・事業売却 | 歯科医院の事業資産の一部、あるいはすべてを譲渡すること。ほぼ同義の言葉である。 |
事業承継(事業継承)は、経営権の交代を指す言葉です。歯科医院について事業をはじめ土地や建物、株などのすべてを受け渡すことをいいます。
一方で事業売却(事業譲渡)は、歯科医院の「事業資産」を売却することです。事業は手放しますが、法人としての株式や出資持分などは受け渡さず、売り手側がそのまま保持します。
歯科医院の事業承継形態の種類
歯科の事業承継の形態には、以下の種類があります。
関係性 | 対象形態 |
親子・親族(生前・相続) | 個人診療所(非法人) |
第三者 | 医療法人(包括譲渡・事業譲渡) |
持分あり(平成19年4月以前) | |
持分なし(現行) |
事業承継のメリット
開業コストを抑えられる
診療ユニットやレントゲン設備、待合室の内装などをそのまま使える場合が多く、新規開業と比べて初期投資を大幅に削減できます。また、継承元の契約条件によっては、賃貸契約の引き継ぎや、既存施設を利用できることがあります。
既存患者を引き継げる
継承する医院に通院している患者がそのまま残るケースが多いため、新規開業時の集患リスクが低くなります。また、長年の運営実績に基づいた信頼や知名度をそのまま活用できるため、新規の広告費用が抑えられます。
事業承継のデメリット
設備や施設の老朽化
引き継ぐ医院の設備が古い場合、修繕や更新が必要になり、システムコストが想定より高騰する可能性があります。また、診療ユニットや待合室のデザインが最新の患者ニーズ(例えば、バリアフリーや広いスペース)に対応していない場合、リフォームが必要です。
ブランディングイメージの定着に時間がかかる
前院長の運営スタイルや治療方針が患者に根付いている場合、新しい方針への変更が難しいことがあります。また、患者が前院長と比較することがあり、かえって新院長への信頼を得るまで時間がかかってしまうこともあります。
歯科医院の継承でよくあるトラブル
契約に関するトラブル
設備や建物の状態に関する契約内容が不明確であったり、賃貸契約や売買契約で不利な条件が含まれているなどのケースがあります。
事前に専門家(弁護士や会計士)を交えて契約書を精査するなどの対策をしましょう。
患者の離脱
医院のスタッフや診療スタイルの変更により、患者との信頼関係が途切れてしまったり、治療方針の変更で離脱してしまうケースがあります。
移行をスムーズにするために継承後も前院長が一定期間診療に関わるなどの対策をしている医療機関もあります。
事業承継にかかる費用
継承開業にかかる主な費用は以下のとおりです
・譲渡代
・仲介手数料
・弁護士費用
・医師会入会金
その他にも必要に応じて発生する内装費用や設備台なども考慮すると一般的な相場は2,000万円~4,000万円程度です。継承する医院の立地条件や評判がいいと高額になる場合もあります。
歯科医院の事業承継を進めるうえでの流れ
歯科医院の事業承継は以下の6つのポイントで進んでいきます。
- 売り手が歯科医院の現状を把握する
- 売り手が承継先を決める
- 買い手が設備の入れ替えなど「承継すること・しないこと」を決める
- 買い手が事業承継計画を立てる
- 売り手と買い手がデータの引き継ぎをする
- 売り手が買い手にアドバイスをしながら経営を安定させる
歯科医院の現状を把握する
まずは売り手側が歯科医院の現状の資産や経営状況を整理し、数値化します。
- 月・年ごとの収入と支出
- 導入しているシステム
- 業務の流れ
- 従業員数
- 患者数
- 医院の強みと周辺の競合
- 目指している歯科医院像
主に上記の要素を整理しておくことで、この後の買い手選びや交渉がスムーズにいきます。
承継先を決める
親族間の承継の場合は承継先が決まっていますが、第三者に受け継ぐ場合は承継先を探す必要があります。これまでのお付き合いのなかで決められる方が多いです。ただ仲介業者やマッチングサイトなども機能しています。
事前に「承継先に何を求めているのか」を整理しておくことが重要です。「自分の目指す歯科医院像を体現してくれる方」や「金銭的に安定して経営を続けてくれる方」などの観点を設けておくことで探しやすくなります。
承継すること・しないことを決める
基本的に事業承継の場合は会社の資産がすべて受け継がれることになります。しかし買い手によっては、承継のタイミングで受け継がずに刷新したい要素もあります。
特に多いのが「システム面」です。「承継を機にオンプレミス型のシステムからクラウド型に変える」などのニーズがあります。
またスタッフのオペレーション構築も含めて、承継前からシステムを入れ替えることもあります。この際に良かれと思って、売り手側が承継前に新システムを導入することで、反対に負債を増やしてしまうケースもあります。必ず事前に買い手側との認識をすり合わせておくことが大切です。
事業承継計画を立てる
買い手としては、承継後の事業計画づくりも大切です。明確なフォーマットはありませんが、売り手に安心してもらうためにも、以下のような要素をあらかじめ論理的に決めておきます。
事業承継の概要
- 現経営者
- 後継者
- 医院名
- 承継の方法
- 承継の時期
経営理念と中長期的な目標
- 経営理念
- 事業のビジョン
- 数値目標
- 現状の売上高と経常利益
- ◯年後の売上高と利益
- 数値目標を達成するための方針
データの引き継ぎをする
承継後もスムーズに事業を進められるよう、カルテ・レセプトなどのデータを移行します。両方とも5年間の保存期間がありますので、漏れがないようにしましょう。またすでに懇意にしている患者さんのデータなども引き継ぎをすることで、集患面での損失を防ぎます。
売り手がアドバイスをしながら承継後もサポートする
事業承継により、歯科医院のカラーが大きく変わることもあります。ただし残るものもあります。例えばスタッフはそのまま引き継がれます。親族間の場合は、働き方に大きな変化が生じることはないと思いますが、第三者に承継すると、場合によっては労働環境などが大きく変わり、離職につながることもあります。
また懇意にしている患者さんも変化を受けて離れてしまう可能性があります。このあたりのバランスについては、安定するまで元の経営者が適宜アドバイスをする必要があります。
ただし「いつまでもバトンを渡さない」はNG
アドバイスをすることは重要ですが、いつまでも元の経営者が口を出してしまい、経営しにくさを感じてしまう、というケースもあります。あくまで経営権は移っておりますので、元の経営者には「バトンを渡す」という潔さが求められます。
歯科医院を継承する際の開設届の手続き
歯科医院を継承開業する際には、保健所や厚生労働省などに必要な開設届を提出する必要があります。以下に必要な手続きと届出書類の詳細を説明します。
現開設者が行う手続き
・診療所廃業届
・診療用エックス線装置廃止届
・保険医療機関廃止届
・事業廃止届出書
・個人事業の開廃業等届出書
・給与支払事務所等の廃止届出書
新開設者が行う手続き
・診療所開設届
・エックス線装置備付届
・保険医療機関指定申請書
・保険医療機関遡及願
・個人事業の開廃業等届出書
・青色申告承認申請書
・青色専従者給与に関する届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書
事業承継を経験した歯科医院の声
Dentisを導入していただいている歯科医院さまのなかには、事業承継を経験された歯科医院もあります。こちらでは、Dentisが実際に事業承継を経験された先生に取材してわかった、リアルな体験談をご紹介します。
親族間承継をおこなった歯科医院の体験談
買い手のAさん
最初は父親から譲り受けるということで、コミュニケーションに不安はなかったです。ただ「承継後にデジタル化をしたい」と提案したところ、最初は反対をされました。このあたりは、家族だからこそ言いやすかったのかもしれませんね。
実際、紙のカルテや予約台帳を使うよりもクラウドツールを導入したほうが、業務が楽になるのはわかっていました。ですので「まずは1カ月だけ使ってみて、それでダメなら辞める」と提案したところ受け入れてくれました。
今では父親も「紙で管理していたころには戻れない」と言っています。昔ながらの歯科医師だと、デジタル化に否定的な方もいらっしゃると思いますが、実際に使ってもらうと便利さに気づけるはずです。「まずは1カ月」という言葉は有効だと思いますね。
従業員承継をおこなった歯科医院の体験談
売り手のBさん
私が65歳になったので、そろそろ事業承継をしようと考えていました。しかし子どもはおりませんので、受け継ぐなら勤務医として働いてくれているスタッフにしようと思っていましたね。彼は治療技術は高いのですが、もちろん経営経験はありません。その点のみ気がかりでしたので、最初の1年間は私がアドバイザーとしてサポートをしていました。
従業員への継承の場合、ほとんどが「経営経験のない医師に引き継ぐ」となると思います。ですので売り手側としては、引退する前に承継をすることを伝えて、感覚をつかんでもらうまではサポートをする必要があると思いますね。
第三者への承継をおこなった歯科医院の体験談
売り手のCさん
高齢になったため事業承継を考えたんですが、息子も勤務医もいなかったために、M&Aの仲介業者さんにおまかせすることにしました。ある程度の経常利益はあったのですが、最初は買い手がなかなかつきませんでした。その理由が「属人的な運営をしていること」。つまり業務のオペレーションをマニュアル化せず、スタッフ個人が独自の知識と経験でおこなっていたんですね。「承継後に業務を任せにくい」という点で、なかなか買い手がつかなかったんです。
結局、どうにか承継することができましたが、これから第三者への承継を考えている院長先生には、デジタル機器を導入したうえで「新人でもすぐ仕事に慣れることができる職場環境」を構築することをおすすめします。
歯科医師の高齢化により歯科の事業承継は増えている
最後に、歯科の事業承継の状況についてご紹介します。歯科の事業承継は年々増えている状況です。その大きな要因が「歯科医師の高齢化」です。
歯科医師のうち「50歳以上の割合」は2014年~2020年までの6年間で4.6%増えています。また「60歳以上の割合」は8.2%増です。また「診療所を経営する開業医」の高齢化率は高く、全体のうち60%以上が50歳以上というデータがあります。
高齢化が進む歯科医院の抱える課題
そのような状況のなか、診療所には以下のような課題があります。
- 治療技術・医療機器の進化についていけない
- DX化が進まない
その結果、いまだに紙やオンプレミス型の機器で業務をしている歯科医院が多いのが現状です。Dentisがおこなったアンケートでは「予約管理を紙でおこなっている医院」「リコールをハガキでおこなっている」といった医院が、全体の多くを占めていました。
こうしたアナログな業務が通常になることで、小規模な診療所では「Z世代が働きにくい状況となっている」「若いスタッフが定着しない」といった問題が発生しています。
一方で大型病院は、課題を解決できる知識や人員のリソースがあります。その結果、小規模医院は大型病院への統合が進んでいる状況です。
次の世代がクリアすることで診療所を守る
こうした課題に対して、承継先の若い医師が積極的に解決していく。それが、小規模医院の経営安定化のうえで重要な要素だといえます。デジタルを活用し、DX化を促進することで、業務効率化はもちろん、患者の満足度も高まることが期待されます。
Dentisは歯科業務をトータルで支援できるクラウド型業務支援システムです。予約、問診、受付、カルテ記入、レセプト、オンライン診療、決済、メッセージ配信などの機能が1つのシステムに詰まっています。
「事業承継に合わせてシステムを刷新したい」「次世代の歯科経営を実現してスタッフが楽に仕事できる医院にしたい」などをお考えの方は、お気軽にご相談ください。以下のページから無料で資料をダウンロードすることも可能です。
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記事監修
株式会社メドレー Dentis編集部
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