
歯科医院の開業に適した年齢とは?統計データからわかりやすく考察
2025年06月24日

歯科医師としてキャリアを重ねる中で、多くの方が「開業」という選択肢を一度は真剣に考えるのではないでしょうか。「何歳で開業するのが最適なのか?」「開業したら年収は増えるのか?」といった疑問を持つことは少なくありません。
本記事では、開業するか悩んでいる先生方に向けて、公的な統計データから開業医の年齢層や収入の実態を考察します。さらに、30代と40代以降それぞれの年代で開業するメリット・注意点や、開業前に必要な準備についても詳しく解説していきます。
記事監修
株式会社メドレー Dentis編集部
歯科や医療に関する情報をわかりやすく発信しています。システムに関する情報だけでなく、医院経営や最新のトピックについても幅広くお届けしています。
INDEX
歯科医院開業に適した年齢とは?統計データから考察

何歳で開業する歯科医師が多いのか、気になる方は多いでしょう。ここでは、公的な統計データに基づき、歯科医院開業の一般的な年齢層について考察します。
併せて勤務医と開業医の収入を比較しますので、ぜひ参考にしてください。
歯科医院を開業するのは何歳が多い?診療所勤務医の年齢から見える傾向
2022年に実施された厚生労働省の調査によると、診療所に勤務する歯科医師の年齢の割合は、29歳以下が2.9%、30~39歳が14.5%、40~49歳が20.3%と、年齢が上がるにつれ増える傾向にあります。
一方、病院に勤務する医師の年齢割合は、30~39歳(33.4%)が最も多く、次いで29歳以下(28.7%)、40~49歳(16.4%)、50~59歳(12.1%)と年齢が上がるにつれて減る傾向が見られました。
上記のデータから、多くの歯科医師は、病院などで経験を積んだ後に診療所へ移り、最終的に40代以降に開業するキャリアパスを歩んでいると予測できます。
参考:厚生労働省|令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
診療所の開設者の年齢割合からわかる開業の一般的な年齢層
上記のデータを、別の角度で考察してみましょう。歯科診療所の開設者(または法人の従事者)の年齢を見てみると、39歳以下が7.3%、40~49歳が19.5%、50~59歳が29.8%と、年齢が上がるにつれ、診療所の開設者(または法人の従事者)は増える傾向が見られます。
このことからも、勤務医として10年以上の経験を積み、40代以降に開業する歯科医が多いことが読み取れます。
参考:厚生労働省|令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
勤務医と開業医の収入比較
中央社会保険医療協議会が実施した「第24回医療経済実態調査」によると、開業医の利益を示す平均損益差額(医業収益から医業費用を引いたもの)は約1,072万円です。これは個人事業主である院長の手元に残る利益、いわば「年収」に近いものです。
一方、厚生労働省による賃金構造基本統計調査では、勤務歯科医師の平均年収は約885万円です。数値を比較すると、開業医の方が190万円ほど多い計算になります。
ただし、開業医の場合は、自分で社会保険料を納付する必要があり、金額だけで勤務医の年収と単純に比較することはできません。とはいえ、開業医の場合、医院の収益が伸びればその分手取りにも反映されやすく、経営手腕によっては開業医の方が収入を伸ばしやすい一面はあると言えます。
参考:中央社会保険医療協議会|第24回医療経済実態調査(医療機関等調査) 報告|
参考:e-Stat|賃金構造基本統計調査
歯科医院の開業は早いほうが有利?年齢別のメリットと注意点を比較
開業のタイミングに絶対的な正解はありませんが、年齢によって享受できるメリットや留意すべきポイントが存在します。
ここでは、比較的若い30代で開業する場合と、経験を積んだ40代以降で開業する場合を比較し、それぞれの特徴を具体的に解説します。
30代で開業するメリットと注意点
30代での開業は体力と情熱にあふれており、長期的な視点で経営に臨める点が大きな強みです。最新技術の導入にも前向きに取り組みやすく、医院を発展させる力となるでしょう。
一方で、臨床経験が比較的浅く、多様な症例への対応力に不安を感じる場面があるかもしれません。また、自己資金の準備やスタッフマネジメント経験の浅さ、結婚や育児といったライフイベントとの両立が課題になる可能性があります。
40代以降で開業するメリットと注意点
40代以降での開業は、長年培ってきた豊富な臨床経験と専門知識が強みとなります。幅広い症例への対応力から、患者さんとの信頼関係も構築しやすいでしょう。勤務医時代の人脈や、自己資金を準備しやすい点もメリットです。
ただし、体力面では若い世代に比べて配慮が必要と言えます。また、融資を受ける際は年齢がネックとなる可能性も否定できません。
歯科医院を 開業する前に準備すべき3つのこと

どの年齢で開業するにしても、経営を軌道に乗せるためには事前の準備が不可欠です。
ここでは、特に重要となる3つの準備項目について、具体的なポイントを交えながら解説します。
1. 臨床スキルを積む
開業医として患者さんから選ばれ続けるには、信頼される臨床スキルが必要不可欠です。一般歯科に加え、インプラントや矯正歯科など自身の強みとなる専門分野を追求するのも良いでしょう。資格取得も有効です。
腕が良いという評判は、クリニックの集患に大きく影響します。開業に向けて、学会活動や研修などに積極的に参加し、臨床スキルを高めていきましょう。
2. 経営者としての視点を育てる
開業するのであれば、診療技術だけでなく、経営手腕を身につけることも重要です。スタッフが働きやすい環境のための労務管理、健全な財務を維持する会計知識、自院の強みを伝え患者さんに選ばれるマーケティング戦略など、院長の業務は多岐にわたります。
開業準備に取り掛かる前に、開業セミナーへの参加や書籍での学習を進めておきましょう。税理士や社労士といった専門家との人脈作りも大切です。
3. 開業資金を計画的に用意する
歯科医院の開業には、数千万円から1億円超の資金が必要となることもあります。特に新規開業を検討する場合、物件取得や内装工事、医療機器の導入など、多くの開業資金が必要です。
開業時には融資を受けるのが一般的ですが、自己資金を多く準備できれば条件が有利になる傾向があります。まずは現在の資産状況を把握し、目標額に向けた具体的な資金計画を立てることから始めましょう。
まとめ
歯科医院の開業には年齢ごとに異なるメリットと注意点があり、30代の情熱や柔軟性、40代以降の経験や信頼性など、それぞれに強みがあります。統計データを通じて開業年齢の傾向や収入差を把握したうえで、自身にとって最適なタイミングを見極めることが重要です。
また、開業を成功させるためには、確かな臨床スキルに加え、経営の知識と資金計画が不可欠です。本記事を参考に、後悔のない開業準備を進めていきましょう。具体的な開業の流れを知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:歯科医師の開業について、開業までの流れ・手続き・成功させるために重要なことを紹介
<参考URL>
https://www.ism2001.com/info/column/403/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/22/dl/R04_1gaikyo.pdf
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040155820
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003445758
https://121.dental-plaza.com/column/2023/03.html
https://121.dental-plaza.com/column/2023/04.html
https://www.compass-dc.jp/contents/archives/3185
記事監修
株式会社メドレー Dentis編集部
歯科や医療に関する情報をわかりやすく発信しています。システムに関する情報だけでなく、医院経営や最新のトピックについても幅広くお届けしています。
ブログ一覧に戻る