カルテの保存期間は「5年」|移行時における紙カルテの保存方法もわかりやすく解説!

カルテの保存期間は「5年」|移行時における紙カルテの保存方法もわかりやすく解説!

2024年01月22日

カルテ(診療録)の保存については、医師法及び歯科医師法によって5年と定められています。この期間は、適切に保存する必要があります。

本記事では、カルテの保存期間や電子カルテへの移行時における紙カルテのデータ化の方法について解説しています。また、スキャン後の紙カルテを保存する方法についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

カルテの保存期間は「5年」

カルテの保管期間については、医師法・歯科医師法によって5年と定められていますが、その開始点がいつの時点であるかは具体的に示されていません。保険医療機関及び保険医療担当規則第9条では、診療が完結した日を起点として5年間の保管が求められています。

保険医療機関及び保険医療担当規則は厚生労働省による規則であり、医師法によって禁止されるものではありませんが、保険医療機関は遵守する義務があります。治療中の場合には、5年を超える保管が必要になることもあります。

治療完了から5年が経過している場合でも、医療過誤が後になって発覚し、事実調査のために現場でカルテの開示が求められることがあります。

カルテ以外の書類における保存期間一覧

医療機関で発生する書類は、医療法などのさまざまな法律で保存期間が定められています。もし、保存期間内に破棄してしまった場合は、法律違反として罰則が与えられる可能性もあるため注意が必要です。

医療機関における主な書類の保存期間は以下のとおりです。

保存期間 書類
5年 ・救急救命処置録
・助産録
・エックス線装置等の測定結果記録
・放射線障害が発生するおそれのある場所の測定結果記録
3年 ・歯科衛生士の記録
・調剤済み処方箋
・(保険医療機関の)療養の給付の担当に関する帳簿、書類その他の記録
・(保険薬局の)療養の給付に関する処方箋、調剤録
2年 ・病院、診療所または歯科技工所で行われた歯科技工に係る指示書
・病院日誌
・各科診療日誌
・手術記録
・検査所見記録
・エックス線写真
・(病院の)入院患者・外来患者の数を明らかにする帳簿
・(特定機能病院の)紹介状
・エックス線装置等の使用時間に関する帳簿

出典:厚生労働省「保険局医療課 標準文書保存期間基準(保存期間表)」

電子カルテの保存で欠かせない「電子保存の3原則」とは?

電子カルテの保存に関して重要な「電子保存の三原則」には、真正性、見読性、保存性があります。それぞれについて解説していきます。

  • 真正性

    電子カルテが改ざんされていないこと、本物であることを保証すること。これには、作成者の確認やアクセス管理が含まれており、セキュリティ対策も重要です。安全性を優先し、信頼性を維持するために不正アクセスや改ざんを防ぐ措置が必要です。

  • 見読性

    文書や画像が簡単に読み取れること。情報は明確であり、必要な時に適切にアクセスし、情報を抽出できることが求められます。 患者や家族が理解できるように、情報の提案方法にも気を配る必要があります。

  • 保存性

    保管期間に真正性、見読性を保持しながら復元可能な状態にすること。これは、データのバックアップやウイルス対策、システムの定期的なメンテナンスが必要。電子カルテのデータは時間とともに失われない限り、常に正確でアクセス可能な状態であること。

これら3つの原則に従っている電子カルテを利用することが肝心です。

電子カルテへの移行時における紙カルテのデータ化の方法

次に、電子カルテへの移行時における紙カルテのデータ化の方法について解説します。

  • 紙カルテをスキャンしてデータ化する
  • 「電子署名」と「タイムスタンプ」が必須

それぞれについて詳しくみていきましょう。

紙カルテをスキャンしてデータ化する

紙カルテをスキャンしてデータ化するには、3つの方法があります。自院にとって最適な方法はどれか確認してみてください。

フラットベッド式

紙カルテのデータ化を行う方法の一つにフラットベッド式があります。この方法は、紙文書を1枚ずつスキャナーでスキャンする形式です。

手間がかかるものの、各ページを個別に確認しながらスキャンすることができ、スキャン忘れのミスを軽減させることが特徴です。一般的なコピー機と同様の操作性で、遮光性に優れた高精度のイメージが得られる点が長所です。

オートフィード式

紙カルテを効率的にデータ化する手段としてオートフィード式があります。この方式では、複数の紙カルテをスキャナに自動で送り、連続してスキャンします。

技術の進歩により、スキャナーはより高速で高解像度の読み取りが可能となり、大量の文書を短時間で処理が可能です。この方法は、その効率の良さから人気を集めています。

スタンド式

紙カルテのデジタル化の方法として、 スタンド式があります。スキャナーが自立する構造を持ち、内蔵カメラを使って上から書類を撮影してデータ化します。

この方式は、本や書類を開いて置くだけでスキャンできるため、操作の手軽さが魅力です。 ただし、ページを1枚ずつ手動でめくりながらスキャンする必要があるため、作業効率は低いです。

また、A3サイズの大きな書類も取り扱える柔軟性や、比較的低価格である点はメリットとなります。

このような特性から、スタンド式スキャナーは特定の条件でのデータ化作業に適しています。

「電子署名」と「タイムスタンプ」が必須

電子カルテにデータ化した文書を保存する際、「電子署名」と「タイムスタンプ」が必須となります。単にスキャンしただけのPDFファイルでは、その文書が原本としては認められないため、物理的な原紙を保管する必要性があります。

しかし、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインによると、運用管理規定の作成と情報管理責任者の配置によって、電子署名に関する責任の所在を明確化し、時刻認証事業者のタイムスタンプを施すことで、電子文書が原本として法的に認められます。

以上の経過をたどると、スキャンした文書が電子カルテ上での原本となり、紙カルテの物理的な保管が不要となります。

スキャン後の紙カルテを保存する2つの方法

次に、スキャン後の紙カルテを保存する方法について解説します。

  1. 院内・施設内で保管する
  2. 専門企業の倉庫で保管する

それぞれの内容について詳しくみていきましょう。

1.院内・施設内で保管する

スキャンした後の紙カルテを院内で保管する方法は、多くの医療機関で採用されている従来の手法です。電子カルテの導入が進んでも、過去の紙カルテは重要な医療記録として内部に保管している医療機関が多いです。

紙カルテは、患者の診療記録や処方箋、診療日誌などが含まれ、量が増えるため、定期的な整理や適切な廃棄が重要です。ただし、日本医師会はカルテの永久保存を推奨しています。

来院日や患者ID順など、管理しやすい方法でカルテを整理することが推奨されており、医療機関は適切な保管方法を見つける必要があります。空きスペースを活用して、紙カルテの物理的な保管を継続することも一つの解決策です。

2.専門企業の倉庫で保管する

スキャン後の紙カルテを保管する方法として、専門企業の倉庫を利用する選択肢があります。これまで医療機関は自らの責任でカルテを管理してきましたが、厚生労働省の指針により条件を満たせば外部の外部企業に保管を委託可能となります。

専門の保管会社では24時間体制のセキュリティ対策が整っており、内部での保管よりも安全性が高いと考えられることもあります。 さらに、外部委託はコストを考える効果も期待できます。 重要文書の保管を外部に委託することで、医療機関はスペースの節約と運用コストの削減につながります。

電子媒体により外部保存する場合

カルテをスキャン後、電子メディアを介して専門企業の倉庫で外部保管する際には、以下の厚生労働省が出している指針に注意して行う必要があります。

  • 真正性、閲覧性、保存性を確保するために、電子保存の三原則を遵守する
  • 情報処理機器は、契約に基づく安全な場所に設置されているを確認する
  • 個人情報保護法を含む関連法規を遵守し、患者のプライバシー保護に留意し、個人情報が守られていることを保証する
  • 外部に保存する際は、診療録の保存義務を有する医療機関が責任をもって行う
  • 万が一の事故が発生した場合に備えて、責任の所在を明確にしておく

紙カルテの電子データ化時に外部保管を行う場合には、慎重に企業を選定し、契約内容を明確にすることが肝要です。

紙媒体のままで外部保存する場合

紙カルテをスキャン後、紙媒体のままで専門企業の倉庫に外部保管する際に厚生労働省が出している指針は以下の通りです。

  • 必要に応じてカルテを即座に利用できる体制を確保する
  • 個人情報保護法などの関連法規を遵守し、患者のプライバシー保護に十分留意し、個人情報が保護されることを保証する
  • 外部にカルテを保存する場合、その責任は診療録の保存義務を持つ医療機関が負う
  • 万が一事故が発生した場合に備えて、責任の所在を明確にしておく

これらを実行することにより、紙カルテを外部で安全に保管することが可能となります。

ネットワークを通じて外部保存する場合

スキャンした紙カルテをネットワークを介して専門企業の倉庫で保存する方法は、クラウドサービスを活用する現代的なアプローチです。この方法は、クラウド型電子カルテやオンプレミス型電子カルテでのクラウドバックアップに適しています。

厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」によると以下の要件を満たしている必要があります。

  • 真正性、閲覧性、保存性を確保するために、電子保存の三原則を遵守する
  • に関する経済産業省の「医療情報を受託管理する 情報処理事業者向けガイドライン」や総務省の「クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン」を遵守することを契約上で明確に定め、定期的な報告にて遵守状況を確認する
  • 受託事業者には、保守作業に必要な範囲を超えた情報の閲覧をさせない
  • 外部保存の実施について、院内掲示などを通じ、患者へ説明する
  • 万が一事故が発生した場合に備えて、責任の所在を明確にしておく

この保存方法はコスト削減や運用の効率化を実現しますが、インターネットを介した情報漏洩のリスクもあるため、慎重な運用が必要です。

電子カルテの保存期間でよくある3つの質問

最後に、電子カルテの保存期間でよくある質問について解説します。

  • 【質問1】データ化した後の紙カルテを破棄する方法は?
  • 【質問2】閉院した場合の保管義務はどうなる?
  • 【質問3】電子カルテの義務化はいつから?

【質問1】データ化した後の紙カルテを破棄する方法は?

データ化を終えた紙カルテの破棄は、患者のプライバシー保護を重視して慎重に行う必要があります。カルテに含まれる個人情報が外部に漏洩すると、プライバシー侵害や医師法違反に問われ、罰金の支払い等の処分を受ける可能性があります。

クリニック内で廃棄する場合、カルテをシュレッダーで細かく裁断してから廃棄します。また、廃棄作業を外部の企業に依頼する際は、プライバシーマークを持つ企業を選び、書類の解決や裁断を自らの目で確認できるサービスを提供している企業に依頼することが重要です。

【質問2】閉院した場合の保管義務はどうなる?

閉院した医療機関のカルテ保管義務には、以下の3つのパターンがあります。

  • 別の医療機関へカルテを継承する場合

    カルテの管理責任は新たな病院管理者に移行します。これにより、継承先の医療機関が保管義務を担うことになります。

  • カルテを継承せずに閉院

    元の医療機関に保管義務が残ります。法定のカルテ保管期間は5年であり、保管し続ける必要があります。

  • 管理者が死亡した場合

    カルテの保管義務は遺族には移さず、公的機関での保管が推奨されています。損害賠償責任は遺族に移るため、重要な書類は保管しておくべきです。

【質問3】電子カルテの義務化はいつから?

2021年10月より、オンライン資格確認の導入に向けた本格的な運用が開始されました。その後、2023年4月からはオンライン資格確認の原則義務化が施行されています。

政府は2030年を目標に、クラウド型電子カルテの導入を全医療機関で推進する方針を打ち出していますが、完全な義務化についてはまだ明言されていません。

まとめ

この記事では、カルテの保存期間や電子カルテへの移行時における紙カルテのデータ化の方法、スキャン後の紙カルテを保存する方法について解説しました。

カルテの保存については、医師法・歯科医師法によって5年と定められています。また、電子カルテの場合は、電子保存の三原則に則って、適切に保存しなければなりません。

ただし、スキャン後の紙カルテを保存する場合は、院内だけでなく、専門業者の倉庫で保管しても問題ないとされており、厚生労働省の指針に沿った対応が必要になります。

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