歯科の開業場所を決めるには?選定のポイントや探し方を詳しく解説!

歯科の開業場所を決めるには?選定のポイントや探し方を詳しく解説!

2025年10月03日

歯科医院を開業する際、「開業場所」の選定は、経営の成否を大きく左右する重要な判断です。立地は患者層や診療内容の方向性に直結し、医院の将来像を決める土台となります。

しかし「交通の便がいいから」「家賃が手頃だから」といった理由だけで決めてしまうと、思わぬリスクを抱えることになりかねません。そこで本記事では、歯科医院の開業場所がなぜ重要なのかという根本的な理由から、候補地を評価するための要素、エリアごとの特徴と適した診療内容などを詳しく解説します

Dentis編集部

記事監修

株式会社メドレー DENTIS編集部

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歯科の開業場所が重要な理由

開業場所はいったん決めると、簡単には変えることができません。歯科ユニットやレントゲンのような大きくて高額な医療機器を設置したり、専門的な内装工事を行ったりするためには、多額の初期費用がかかります。つまり、もし開業後に「思ったより患者さんが来ない」と感じても、飲食店のようにすぐに移転することはできないのです。

また、立地は経営の成否を大きく左右します。駅前や商業施設内なら通勤や買い物の途中で立ち寄りやすく、住宅街なら家族や高齢者、子どもの定期的な通院が見込めます。一方で競合医院が多いエリアでは差別化が難しく、診療スタイルや対象患者を明確にして選ぶ必要があります。

このように開業場所の選定は単なる「便利さ」ではなく、患者層・将来性・施設条件を総合的に判断する重要な経営戦略なのです。

歯科の開業場所を決める要素

最適な開業場所を見つけるためには、多角的な視点から候補地を評価する必要があります。ここでは、意思決定に不可欠な5つの要素を解説します。

患者が日常的に利用する生活動線上にあるか

切です。歯科医院がそうした動線の近くにあれば、買い物や通勤のついでに立ち寄りやすくなり、患者に認知されやすく集患にもつながります。

また、朝や夜、休日など、時間帯によって人通りがどう変化するかも現地で確かめておくと安心です。たとえ交通量が多くても、人々が普段から歩いて利用する道でなければ効果は薄くなります。さらに、今後の再開発やまちづくりの計画によって生活動線が変わる可能性もあるため、長期的な視点で将来性を考えておくことも重要です。

地域にターゲットとなる患者が多いか

地域の住民構成や生活スタイル、年齢層などが医院の診療方針や提供するサービスと合っているかは極めて重要です。例えば、小児歯科中心なら若い子育て家庭が多い住宅街が望ましく、審美歯科や高額自費診療を重視するなら、可処分所得が高めの住民が多いエリアを選ぶほうが成功率が上がります。

近年は高齢化が進む地域もあり、高齢者向けのケアやバリアフリー対応といった条件も考慮に入れなければなりません。住民の移動手段(車か公共交通か)、車所有率、通勤時間帯の混雑パターンなども、来院動機に影響する要素です。

どのような競合が存在するか

既存の歯科医院がどのくらいあり、どのような診療内容・価格帯・診療時間で運営しているかを調べることも重要です。競合が多いからといって必ず不利になるとは限らず、差別化できる診療スタイルを持てばむしろ集患できる余地があります。

例えば、近隣医院が一般歯科主体なら、予防歯科や矯正・審美を強化する、あるいは診療時間を工夫することで競争優位を築けることがあります。競合の立地・看板・アクセス性・評判なども含め、患者から見た使いやすさや「どこが選ばれていないか」の視点で分析しましょう。

物件の条件が希望に沿っているか

立地だけでなく、物件そのものが医院として実用的かどうかも大きな要素です。まず広さですが、診療台数・待合室・技工室・スタッフ動線を見据えて設計されたスペースが確保できることが求められます。ユニット3〜4台なら40〜50坪(約132〜165㎡)程度、 ユニット5〜6台なら60〜70坪(約198〜231㎡)程度あれば余裕があるでしょう。

ユニット配管やレントゲン室の遮蔽、耐震・防音・バリアフリーの要件など、医療施設として特有の仕様を満たすかもチェックが必要です。賃料・固定費・契約期間というコスト面も長期視点で考慮すべきで、特に駅近や繁華地では賃料が高くなるため、それを売上予想でどれだけ吸収できるかをシミュレーションすることが重要です。

将来性があるか

今だけでなく、5年・10年先も見据えた立地選びが持続可能な医院経営には欠かせません。人口動態が減少傾向にある地域では、新規患者の伸びが見込めないことがあります。また、自治体や都市計画で再開発予定があるか・交通網に変化が予想されるか・周辺施設の動きがあるか等を調べておくと見通しが立ちます。

さらに技術や診療ニーズの変化に対応できる設備・スペースを確保できるかどうかも含めて検討したほうがよいでしょう。立地が将来の社会変化に耐えうるものかどうかを判断することで、無用なリスクを減らせます。

開業場所ごとの土地特性

開業場所の特性は、集まる患者層や求められるニーズに直結します。ここでは、代表的な4つのエリア特性と、それぞれに適した診療内容の例をご紹介します。

駅前

駅前という立地の魅力は、常に人の流れがあることです。通勤や通学で電車を利用する人、人の目に入りやすく、視認性が高いため。潜在的な患者へのアピール力は他の場所よりも大きくなります。一方で、家賃は非常に高く、同じような条件を狙う競合医院も集中するため、最も厳しい競争環境でもあります。

駅前で成果を上げるには、人の動きを正確に読み取った戦略が欠かせません。例えば、審美歯科や矯正歯科なら、美意識の高いビジネスパーソンが仕事帰りに立ち寄れる利便性を強みにできます。一般歯科であっても「痛い」「詰め物が取れた」といった急なトラブルにすぐ対応したり、夜間診療を取り入れたりすれば、忙しく時間の限られた人々のニーズに応えられます。

商業施設・商業エリア

週末に多くの家族連れや若者で賑わう商業施設やショッピングモールは、広い地域から人々が集まる集患力の高いエリアです。広大な駐車場が完備されていることも多く、車での来院を前提としたクリニック展開が可能になります。ただし、施設の営業時間に診療時間が制約されるといった側面も考慮しなければなりません。

商業施設・商業エリアの強みは、「買い物のついで」に歯科医院へ立ち寄れるという利便性です。特に、子供の治療や検診のスケジュール調整に悩む保護者にとって、小児歯科が施設内にあれば、通院のハードルは劇的に下がります。また、家族単位での来院が期待できるため、「かかりつけ医」としての役割を担うのにも最適な場所と言えます。

オフィス街

オフィス街にある歯科医院は、主な患者層が地域のビジネスパーソンに限られる、非常に特徴的な環境です、患者となるのは、主に時間を効率的に使いたい、身だしなみに気を配る人々です。そのため、昼休みに受けられるホワイトニングやクリーニングなど、審美歯科や予防歯科の需要は高いと考えられます。

また、「会議中に詰め物が取れた」といった急なトラブルに迅速に対応できる一般歯科も重宝されるでしょう。長期的な関係構築よりも、利便性と効率性を追求したサービス提供が求められます。

住宅街

住宅街は長期にわたる安定した医院経営を目指すのに最も適した場所です。駅前のような爆発的な集患力はありませんが、一度信頼を得れば、評判が口コミで着実に広まっていきます。

住宅街で求められるのは、地域の「ホームドクター」としての役割です。お子様の初めての歯科検診から、働き盛りの世代の虫歯治療、そして高齢者の義歯の相談まで、家族全員の口腔の健康を生涯にわたってサポートする一般歯科・小児歯科が中心となります。

開業場所を見つける方法

理想の開業場所を見つけるためには、データ分析と現場感覚の両方を駆使した、体系的なアプローチが必要です。ここでは開業場所を見つける方法について詳しく解説します。

診療圏を分析する

診療圏を分析する際は、まず開業予定地を中心に「どこまでを診療圏とするか」をはっきり定めることから始めます。徒歩・車・公共交通など、患者が通院に利用する手段によって行動範囲は変わるため、対象とする層に合わせて適切な距離を設定します。さらに、圏内の人口構成を把握し、将来的な人口動向まで見通しておくことが大切です。

同時に、地域の強豪も調べておきましょう。診療スタイルや想定される患者層、営業時間などを確認し、競合がどんな強みを持っているのかを見極めます。ただ数を数えるだけでは不十分で、地域に足りない分野や差別化できる余地を探すことが重要です。

現地調査する

診療圏の数字だけでは、実際の感覚をつかむことはできません。まずは周辺を歩き、駅やバス停からのアクセス、人や車の流れ、近隣施設との位置関係を観察しましょう。そうすることで、患者がどのように来院するかを具体的に想像できるようになります。

物件の見えやすさも大切です。入口の広さや看板の設置場所など、外から見てすぐに気づかれるかどうかを確認しましょう。条件が良くても、人の目に留まりにくい立地では集患に結びつきません。

訪れる時間帯を変えて調査することも有効です。平日昼と夜、休日などで人通りや交通量、騒音の状況は大きく変わります。診療時間に近い時間帯を実際に歩いたり車で通ったりすることで、数字だけでは見えないリアルな情報が得られます。

開業コンセプトと合致しているか見極める

開業のコンセプトをはっきりと言葉にしておくことが大切です。どんな診療スタイルを目指すのか、どの患者層を中心に考えるのかなどを明確にすることで、立地との相性を判断する基準ができます。

経済的なバランスも見逃せません。家賃や改装費、維持費が過大であれば、どんなに理想的な立地でも継続が難しくなります。費用対効果をシミュレーションし、採算に合うかどうかを判断することが欠かせません。

関連記事:歯科医院の開業における「コンセプト」とは?重要となる理由やコンセプトづくりで考えるべきことを解説!

まとめ

歯科医院の開業場所選定は、単なる「物件探し」ではなく、自院の未来を左右する極めて重要な「戦略的意思決定」です。

今回ご紹介したように、明確なコンセプトを基軸に、客観的なデータ分析とご自身の足で確かめた現場感覚を組み合わせて慎重に場所を選ぶことが、地域に愛され、長く続くクリニックを築くための第一歩となるでしょう。

Dentis編集部

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