
歯科開業で使える融資制度を紹介!開業資金の目安や準備方法も解説
2025年07月07日

歯科医院の開業には多額の資金が必要となるため、資金調達が大きな課題となります。自己資金だけですべてを賄うのは難しく、多くの場合、融資を利用することになるでしょう。
本記事では、歯科医院の開業に必要な資金の全体像から、利用できる融資制度、融資を受ける際の注意点や費用を抑えるコツまで、詳しく解説します。
記事監修
株式会社メドレー Dentis編集部
歯科や医療に関する情報をわかりやすく発信しています。システムに関する情報だけでなく、医院経営や最新のトピックについても幅広くお届けしています。
INDEX
歯科医院の開業に必要な資金の全体像
歯科医院を開業するには、一般的に高額な資金が必要です。開業形態によって大きく異なりますが、テナントを借りて開業する場合で約5,000万円、戸建てで開業する場合は1億円以上かかることもあります。
開業資金の内訳
開業資金は、主に「設備費」「不動産関連費用」「運転資金」の3つに分けられます。それぞれに必要な費用の目安は以下のとおりです。
費用の種類 | 主な内訳 | 費用の目安 |
設備費 | ・ユニット ・CT ・レセコン ・パソコン ・電話 | 2,000万円~3,500万円 |
不動産関連費用 | ・物件取得費 ・保証金 ・内装・設計デザイン費 ・看板設置費 | 1,500万円~3,000万円 |
運転資金 | ・スタッフの人件費 ・家賃 ・医薬品・消耗品の購入費 ・広告宣伝費 | 500万円~1,000万円 |
自己資金と融資のバランス
開業資金の全額を自己資金で賄うのは現実的ではなく、多くの方が融資を利用します。具体的には、開業資金のうち1〜2割を自己資金で用意し、残りの8〜9割を融資で調達するケースが一般的です。
ただし、自己資金が少ない場合でも利用できる融資制度も存在するため、諦めずに情報収集することが大切です。
歯科を開業する際に利用できる4つの融資

歯科医院の開業で利用できる融資は、主に4種類あります。それぞれ特徴が異なるため、自身の状況に合ったものを選びましょう。
公的融資(日本政策金融公庫など)
公的融資の代表例は、政府系の金融機関である日本政策金融公庫による融資です。新規開業者への支援を積極的に行っているのが特徴で、例えば「新規開業・スタートアップ支援資金」であれば最大7,200万円までを無担保・無保証で利用できます。
利率は条件によって異なりますが、民間の金融機関よりも低く設定されることが一般的です。歯科医院の開業において、まず検討すべき融資先と言えるでしょう。
制度融資(信用保証協会)
制度融資とは、地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して提供する公的な支援制度です。信用保証協会が保証人となることで、金融機関からの融資が受けやすくなるメリットがあります。
ただ、信用保証協会に保証料を支払う必要がある点には注意が必要です。また、自治体によって利用条件や対象、融資の内容が異なるため、開業予定地の自治体窓口で詳細を確認しておくと良いでしょう。
プロパー融資(銀行・信用金庫)
銀行や信用金庫などの金融機関から直接受ける融資です。審査は厳しくなる傾向にありますが、事業の実績や将来性によっては、より有利な条件で大きな金額を借り入れられる可能性があります。
また、保証協会を介さないため、審査日数が比較的短いのも特徴です。金融機関により融資の条件や審査基準に違いがあるため、複数の銀行・信用金庫に相談し、提示される条件を比較検討するようにしましょう。
ノンバンク融資(医療ローン)
ノンバンク融資とは、銀行以外の金融機関が提供する融資で、医療ローンという名称が使われることもあります。例えば、医療機器のリース会社が、自社のリース契約とセットで融資を行っているケースが挙げられます。
ノンバンク融資は審査が早く、担保や保証人を求められないケースもある一方で、金利は高い傾向にあります。利用する際は金利や返済条件を十分に確認するようにしましょう。
融資を利用する際の注意点
開業の際に融資を受けるのは一般的なことですが、安易な借入は禁物です。返済計画に無理が生じると、開業後のクリニック経営を圧迫する可能性があります。金利だけでなく、返済期間や保証人の要否など総合的な条件を比較し、自院の返済能力や収支計画に合う融資を選びましょう。
また、融資を受けるうえで、事業計画書を作り込むことは、返済能力を金融機関に示すために重要です。売上予測や具体的な集患戦略を盛り込み、実現可能な計画を提示することが、融資審査での評価につながります。審査には時間がかかる場合もあるため、早めに準備を進めましょう。
開業時の融資額を抑えるための4つの方法
開業後の経営を安定させるためには、できるだけ借入額を抑えることが重要です。特に開業初期は収入が安定しないことも多く、借入額が大きいと資金繰りに余裕がなくなりがちです。ここでは、開業時に必要となる融資額を抑えるための具体的な方法を4つご紹介します。
補助金や助成金を活用する
補助金や助成金は、自己資金を補うために活用できる制度で、どちらも原則として返済が不要です。補助金は事前申請が必要で、審査に通らなければ受給できません。一方、助成金は要件を満たせば比較的受給しやすいものの、支給対象や期間が限定的な場合もあるため、制度の内容をよく確認することが大切です。
開業時に活用できる制度として、国や自治体が実施する創業支援に関する補助金があります。設備費や広告費などの支援を受けられる可能性がありますが、実施状況や内容は自治体によって異なります。事前に自治体のサイトや窓口で確認しましょう。
関連記事:【最新版】歯科医院が活用できる代表的な補助金・助成金13選|特徴や注意点を解説!
自己資金を貯めておく
一般的には、開業資金のうち1,000〜2,000万円程度を自己資金として準備できるのが理想です。すぐにまとまった金額を用意するのは難しいかもしれませんが、開業を意識した時点から長期的に積み立てを行うことで、着実に準備を進められます。
また、自己資金には貯金だけでなく、退職金や財形貯蓄、医局での副業収入などを充てるケースも見られます。将来的に独立を考えているのであれば、日々の生活と並行して資金計画を立てておくことが大切です。
自己資金の割合が高いほど、借入額を抑えられるうえ、金融機関からの信用も得やすくなり、融資審査でも有利に働くでしょう。
親や親戚に援助してもらう
親や親戚から資金を援助してもらうことも1つの方法です。親も歯科医師の場合は、資金援助だけでなく、開業や経営のノウハウについてもサポートが得られることもあるでしょう。
援助の方法には、返済不要の「贈与」と、返済を前提とした「借入」の2種類があります。贈与の場合は年間110万円を超えると贈与税の課税対象となる点に注意が必要です。借入として援助を受ける場合は、相手が親族であっても金額や返済日、利息などを記載した借用書を作成するようにしましょう。
初期費用を抑える
開業にかかる初期費用をいかに抑えるかは、融資額を減らすうえで重要なポイントです。例えば、以前に歯科医院として使われていた居抜き物件を活用すれば、内装工事費を大幅に削減できます。ただし、設備が古いとかえって修繕費がかさむケースもあるため、契約前に必ず修繕の要否や動線の確認を行いましょう。
ユニットやCTなどの高額な医療機器については、新品にこだわらず、リース契約や中古品の導入も検討するとよいでしょう。開業時は必要最低限の設備でスタートし、経営状況を見ながら段階的に整備を進める方法もあります。
また、レセコンなどのITシステムは、クラウド型を選ぶと、コスト軽減だけでなく、メンテナンスの手間も軽減できるためおすすめです。
歯科医の開業準備に困ったときの相談先

開業準備では、まず資金調達に向けた事業計画の作成や、金融機関とのやり取りなど、初期段階から多くのハードルがあります。無事開業資金が準備できたあとも、物件探しや内装設計、スタッフ採用など、開業までの課題は多岐にわたります。特に初めての開業では、すべてを1人で進めるのは難しい面もあるでしょう。
開業準備に困ったときは、歯科専門の開業コンサルタントや、地域の歯科医師会に相談してみることをおすすめします。具体的な手続きや準備の進め方について、的確なサポートを受けられるはずです。
歯科医院の開業資金についてのよくある質問
歯科医院の開業を視野に入れたときに、融資や収入の見通しに不安を感じる方は少なくありません。ここでは、自己資金が少ない場合に融資を受けるためのポイントや、開業後の収益の見通しなど、よくある疑問にお答えします。
自己資金がなくても融資を受けられますか?
自己資金が全くない状態では、金融機関からの融資を受けるのは非常に難しいのが実情です。金融機関は、申込者の自己資金の額から事業への熱意や計画性を判断する側面があるためです。
ただし、事業計画の質や将来性によっては、自己資金が少なくても融資の審査に通る可能性はあります。また、日本政策金融公庫などでは、創業支援として自己資金要件が緩和される制度もあるため、相談してみましょう。
歯科医院の年収相場はどのくらいですか?
歯科医院の年収は、規模や経営状況によって大きく異なりますが、一般的には1,200~1,400万円が相場と言われています。経営の工夫や自費診療の割合によって、更に高収入を目指すことも可能です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:開業歯科医の年収目安とは?年収を上げるためのポイントや要素をわかりやすく解説!
歯科医院の開業の流れを教えて下さい
歯科医院を開業する際の大まかなステップは以下のとおりです。
- コンセプトを設計する
- 事業計画書を作成し開業資金を準備する
- 物件を選定し内装工事・医療機器の発注を行う
- 開業に必要な行政手続きを行う
- スタッフの採用や物品の準備を行う
それぞれのステップの詳細や注意点を知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
まとめ
歯科医院の開業には多額の資金が必要ですが、すべてを自己資金で賄う必要はなく、融資制度を活用するのが一般的です。一口に融資と言っても、借入可能額や金利、審査期間などは金融機関によってさまざまです。公的融資や制度融資などの選択肢を比較し、自院の収支計画にあうものを選びましょう。
また、補助金・助成金の活用や初期費用の削減も、借入額を抑えるのに有効です。この記事を参考に、開業に向けて計画的に資金を準備していきましょう。
<参考URL>
https://www.insite.co.jp/shikakaigyotopics/financing-method/
https://dentis-cloud.com/blog/opening
記事監修
株式会社メドレー Dentis編集部
歯科や医療に関する情報をわかりやすく発信しています。システムに関する情報だけでなく、医院経営や最新のトピックについても幅広くお届けしています。
ブログ一覧に戻る