歯医者の開業成功率はどのくらい?失敗する原因と成功率を上げるポイント

歯医者の開業成功率はどのくらい?失敗する原因と成功率を上げるポイント

2025年10月03日

歯科医院の開業は、独立という夢を叶え、地域医療に貢献できる大きなチャンスです。一方で、多額の初期費用や運転資金、競争の激化、人材確保の難しさなど、経営を揺るがすリスクも少なくありません。

近年は診療報酬の伸び悩みや物価上昇が収益を圧迫し、かつては「安定した業種」とされた歯科医院でも廃業が目立つようになっています。こうした変化を理解するには、開業率の推移、収益モデルの特徴、そして廃業率の動向を把握することが欠かせません。本記事では、歯科医院の開業を取り巻く現状について解説します。

Dentis編集部

記事監修

株式会社メドレー DENTIS編集部

歯科や医療に関する情報をわかりやすく発信しています。システムに関する情報だけでなく、医院経営や最新のトピックについても幅広くお届けしています。

歯科医院の開業「成功率」の現状について

歯科医院を新たに開業するには、多くの準備と高いリスクが伴います。その一方で「歯科医師として独立したい」「地域医療に貢献したい」という思いを叶える道でもあります。

ここではまず、歯科医院の開業率と収益モデル、廃業率について見ていきましょう。

歯科医院の開業率

厚生労働省の統計「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によれば、国内の歯科医師総数105,267人のうち、病院や診療所に勤務する「医療施設従事者」は101,919人です。

その中で、病院の代表または開設者はわずか33人にとどまる一方、診療所の代表・開設者は56,767人に上り、全体で見た開業率は55.7%となっています。

しかし、この数値は前回の調査(令和2年)から約4%(2,100人)下落しており、特に診療所における開業率の低下が顕著に見られます。背景には都市部を中心とした競争の激化、初期投資や運転資金の負担増、さらに診療報酬の伸び悩みなどが挙げられます。

若手歯科医師が開業に踏み切りにくい状況が続いている一方で、既存の開業者も環境変化に適応する経営力が求められており、開業率の変化は業界全体の課題を映し出しているといえるでしょう。

参考:厚生労働省|令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

歯科医院の収益モデル

歯科医院の収入は大きく分けて「保険診療」と「自費診療」の二本柱があります。保険診療だけでは報酬に限りがあり、材料費や人件費などの固定費が上がると、利益が出にくくなるため、最近は特に、自費診療の割合をどう増やすかが重要なテーマになっています。

自費診療には、審美歯科や矯正、インプラントといった治療が含まれます。利益率の高い医院ほど、こうした診療の比重が大きくなっており、歯科医院の中には自費診療を30%以上、場合によっては50%近くまで引き上げる戦略をとるところもあります。

売上の規模によっても収益構造は変わります。売上が1億円を超えると人件費の負担が大きくなり、小規模な医院よりも必ずしも利益率が高いとは限りません。さらに、立地条件やスタッフの体制、設備投資の大きさなども収益に大きく影響します。

歯科医院の廃業率

これまで歯科医院は「つぶれにくい業種」と言われ、倒産や廃業はほとんどありませんでした。ところが状況は2024年に大きく変わります。帝国データバンクの調査によると、2024年1月から6月までの半年間で、倒産や休廃業に至った歯科医院は85件に達しました。

これは過去最多だった2023年の年間件数104件に迫るスピードで、歯科医院の淘汰が徐々に進んでいることを示しています。

歯科医院の廃業数の増加は偶然ではなく、歯科業界が抱える根本的な問題が表面化した結果と考えられます。人件費や材料費の上昇、患者数の伸び悩み、後継者不足など、複数の要因が重なって経営を圧迫しているのです。次の章では、こうした背景にある「なぜ廃業に至るのか」という具体的な原因について詳しく見ていきます。

参考:株式会社帝国データバンク|レポート「歯科医院」の倒産・休廃業解散動向調査(2024年1-6月)

なぜ失敗する?歯科開業でつまずく3つの原因

廃業が急増している背景には、社会構造の変化と、それに対応できない経営上の問題が存在します。ここでは歯科開業でつまずく3つの原因を詳しく解説します。

関連記事:【院長必見】開業に失敗する歯科医院の特徴は5つ|対策方法やよくある質問をご紹介します!

資金計画の甘さ

歯科医院の開業には大きな初期投資が必要になりますが、この時点で「見積もりが甘い」「予備資金を用意していない」といった失敗が目立ちます。特に予想より患者数が少ない、あるいは収入が立ち上がるまでに時間がかかることを見積もれず、固定費や借入金返済が重荷となって資金繰りが苦しくなるケースが多いです。

設備を豪華にしたり、最新機器を多く揃えたりすること自体は悪くないのですが、それが売上や患者の動きと乖離していると逆効果になることがあります。開業前には、収入・支出の予測を可能な限り具体的にし、損益分岐点(どのぐらいの患者数で黒字になるか)を把握したうえで、余裕を持ったキャッシュフローを見込むことが大切です。

関連記事:【院長必見】歯科医院の開業に必要な費用と目安|調達方法や費用を抑えるコツもご紹介! 

集患・マーケティング戦略の欠如

どんなに設備が整っていて腕が良くても、認知してもらえなければ患者は来ません。競合医院が多いエリアであったり、住民のニーズがどのようなものかを十分に調べていなかったりすると、開業しても十分な集患が見込めない可能性があるでしょう。

さらに、Webサイトが見にくい・SEO対策やMEO(マップ検索対策)がなされていない・SNSやブログによる情報発信が弱く、オンラインでの見つかりやすさが低い場合には、新患獲得に時間がかかるか、そもそも患者が来ないこともあります。

関連記事:歯科医院の集患方法とは?開業前に意識すること・患者離れを防ぐコツも紹介

「経営者」としての視点不足

歯科医師としての技術を持っていても、「医院を経営するもの」としての視点が不足していると、長く続けるのが難しくなります。たとえば、月々の固定費や変動費の把握はもちろん、スタッフの管理・育成やモチベーション維持、院内オペレーションの効率化など、人に関する問題のマネジメント力も求められます。

診療時間の設定や予約管理、キャンセル率の対応など、患者対応に関する細かい運営上の判断を積み重ねることも経営者視点の一部です。さらに、近年では医院のブランディングを行うことも重要です。

歯科開業の成功率を上げるポイント

開業を取り巻く環境が厳しさを増す中で、成功を収めるためには、臨床スキルに加えて体系的な経営戦略が不可欠です。ここでは、失敗のリスクを最小限に抑え、成功率を飛躍的に高めるための具体的なポイントを7つの項目に分けて解説します。

関連記事:歯科医院の経営を成功に導く4つのポイント|安定化に必要な視点や戦略的な考え方を解説!

明確なコンセプトとターゲット設定

まず、診療科目、治療スタイル、価格帯などのコンセプトを整理します。どのような医院として地域に存在するかを最初に描くことが肝心です。

例えば、「保険診療重視」か「自費診療を強める」か、「予防中心」か「審美・矯正中心」かで準備内容も必要資金も変わります。同時に、どんな患者をメインターゲットにするかを決めます。年齢層・居住地域・働いている層・歯科医に求めるものを想像し、その期待に応える医院像を描きましょう。

関連記事:歯科医院の開業における「コンセプト」とは?重要となる理由やコンセプトづくりで考えるべきことを解説!

綿密な事業計画と資金調達

歯科医院を開業するには、初期費用と運営資金が必要です。この見積もりが甘いと、開業後に経営がすぐ苦しくなる危険性があります。

特に開業直後は、思ったより患者数が増えずに赤字が続くことも少なくありません。そのため、どのくらいの患者数を集めれば黒字になるか(損益分岐点)を計算し、「黒字化までにどれくらいの期間がかかるか」を慎重に見積もっておくことが大切です。

資金の準備では、自己資金・銀行からの借入・リースなどを組み合わせ、返済に余裕を持てる計画を立てましょう。また、自治体が提供している補助金や税制の優遇制度を調べて活用できれば、資金面の負担を和らげることができます。

関連記事:歯科開業で使える融資制度を紹介!開業資金の目安や準備方法も解説

成功を左右する戦略的な立地選定

どんなに良いコンセプトがあっても、立地が合っていなければ患者が集まりません。駅近・住宅地内・車でのアクセスなど、患者が来院しやすい場所を選ぶことはもちろんですが、周辺の歯科医院の数、交通量、駐車場の有無、商業施設の近さなどもよく調べましょう。

また、地域の人口構成や年齢構成、所得水準なども重要です。若いファミリー層や高齢者が多いエリアではニーズが異なります。さらに、賃料や地代のコストと見込まれる売上のバランスを取ることも必要です。

オンラインとオフラインを組み合わせた集患戦略

集患はオンラインとオフライン両方を使いこなすことが欠かせません。オフラインでは看板・チラシ・近隣への宣伝・地域イベント参加など、地域住民の目に触れる機会を確保することが基本です。一方オンラインでは、ホームページの見やすさ・スマホ対応・SEOやMEO(Googleマップ検索など地図情報での表示)などが重要です。

患者はスマホで医院を探すことが多いため、口コミやレビューの見え方も含めて信頼を感じてもらえる情報発信が必要です。SNSやブログ・動画を使って医院の雰囲気や院長・スタッフの人柄を伝えると、親近感が出ます。

さらに、来院してくれた人がリピーターになったり紹介につながったりするよう、院内環境・予約の取りやすさ・対応の丁寧さにも力を入れましょう。

安定経営の鍵となる自由診療の導入

自由診療(自費診療)は保険診療だけでは補いきれない収益源です。自由診療を導入する際には、どのメニューをどのくらいの比率で提供するかを計画する必要があります。

例えば、審美歯科・矯正・インプラントなど、設備や技術が求められる自由診療は、導入コストも高いため、回収期間を見越して価格設定を行わなければなりません。また、自由診療を希望する患者層がどの地域にどのくらいいるかを事前調査することが重要です。

自由診療に注力する医院は、自費率が高まるほど利益幅が広がることがありますが、保険診療を軽視すると地域住民に敬遠されることもあります。そのため、保険診療とのバランスをとりながら、自由診療を戦略的に導入することが大切です。

IT活用による業務効率化

医院運営では「診療」以外の業務が意外に時間とコストを取ります。予約管理、カルテ入力、会計、在庫管理、スタッフのシフト調整など、毎日繰り返される作業をできるだけ効率化することが欠かせません。

例えば、電子カルテや予約システムを導入することで、情報の共有や記録の整備を効率化できます。さらに、患者とのコミュニケーションやフォローアップを自動化するツールを使うことで、スタッフの手間を減らしつつ患者満足度を維持できます。

IT投資は初期費用がかかる場合もありますが、長期的には効率化と人件費削減という形で確実にリターンを生むことが多いです。クラウド歯科業務支援システムDENTISは、IT導入事業者であり、Web予約などの歯科業務を効率化できます。

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スタッフが働きやすい環境づくりと人材育成

スタッフが働きにくい環境ではモチベーションが下がり、離職やサービス品質の低下につながります。まずは、理念や診療方針をスタッフと共有して、「この医院がどういう価値を提供したいか」を共有しましょう。

さらに、スタッフが成長を感じられる機会を設けると働きがいが上がります。加えてスタッフ同士のコミュニケーションを円滑に保つための体制を作ることも重要です。

まとめ

歯科医院の増加と社会構造の変化に伴い、開業を取り巻くリスクは確実に高まっています。しかし、視点を変えれば、患者様の満足度を高められていない歯科医院が多いこともまた事実です。つまり、多様化する患者様のニーズを的確に捉え、質の高い医療とサービスを提供できるクリニックには、今なお大きな成功のチャンスが残されています。

収入面だけでなく、自身の理想とする治療やサービスを自由に提供できることは、開業の最大の醍醐味です。優れた臨床家であると同時に、戦略的な「経営者」としての視点を持ち、マーケティングや組織作りにも力を注ぐことで、将来にわたって地域に必要とされる歯科医院となる確率を、飛躍的に高めることができるでしょう。

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